*11:03JST セレンディップ Research Memo(3):M&Aをテコに2027年3月期営業利益25億円を目指す
■セレンディップ・ホールディングス<7318>の中期経営計画
1. 中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ500」
(1) セグメント別シナリオ
ビジネスモデルが構築できてきたこともあり、同社は中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ500」を策定、2027年3月期に売上高500億円、営業利益25億円、ROE20.0%を目指すこととなった。そのため、オーガニック成長で250億円(2024年3月期比51億円強増)、M&Aによる非連続的成長で250億円を達成する考えである。オーガニック成長の中身は、モノづくり事業では、成長戦略を駆使することで売上高216億円(2024年3月期比30億円増)の達成を見込んでいる。プロフェッショナル事業では、自社製アプリケーション事業は引き続き立ち上げフェーズだが、ITコンサルティングのさらなる高付加価値化、協働ロボット事業の本格成長により売上高25億円(同15億円増)、インベストメント事業では、安定的なファンド管理報酬、人員増強によるフィナンシャル・アドバイザリーの拡大、投資案件のエグジットにより売上高9億円(同6億円増)を予想している。
(2) 成長戦略
なかでも重要な戦略がモノづくり事業の成長戦略で、機能・技術を軸としたグローバルなロールアップ型の事業承継M&Aのほか、インド・東南アジア・米国など成長する世界市場への進出、完成品市場や脱炭素・EVへの対応など高付加価値分野への領域拡大、生産性を劇的に向上するフューチャーファクトリー化、ホールディングスの企画機能強化を推進する計画である。
具体的には、事業承継M&Aでは、売上高100億円以上の規模の大型M&Aにより非連続的成長を強力に推進し、売上高で250億円のオンを目指す。海外進出では、海外法人へのライセンス供与から、資本提携を通じた海外生産拠点の獲得への移行、海外拠点を有する企業のロールアップ型M&Aまでのロードマップを構想中で、2027年3月期には取引海外メーカー数5社、海外売上高40億円(オーガニック10億円、非連続30億円)を目指す。高付加価値領域への進出では、グループシナジーを背景に付加価値の高い提案によって売上高30億円を目指す。フューチャーファクトリーでは、人材不足やノウハウ不足という課題に対してITコンサルティングや協働ロボットサービスなどトータルソリューションを提供、プロフェッショナル・ソリューション事業の売上高を25億円伸ばすとともに、DXコンサルタント1人当たり売上高を10%以上増加させる方針である。ホールディングスの企画機能強化では、人員を拡充して企画力を強化するほか、20名を目途に経営人材の早期育成・輩出を進める計画である。さらに、ガバナンスの構築も推進し、2028年にはプライム市場への上場を目指す。
「セレンディップ・チャレンジ500」は順調に進捗
2. 中期経営計画初年度の進捗
中期経営計画初年度の進捗は、事業承継M&Aと海外進出を中心に全般的に順調に進んだと言える。なかでも事業承継M&Aは、2025年3月期は前期比2社増となるイワヰ(現 ユニクレア)、エクセル・グループ、トライシス、高島ロボットマーケティング(現 セレンディップ・ロボクロス)の4社をM&Aし、売上高貢献も初年度にして目標KPIの5分の1に迫る約48億円を達成、さらに2026年3月期に入ってすぐサーテックカリヤという大型M&Aを実行しており、極めて順調に推移している。これは、市場環境からM&Aのパイプラインが潤沢になってきたこと、企業規模が大きくなって100億円規模の企業をM&Aする体力がついたこと、PMI(M&A後の統合作業)の型ができてきたことなどが背景にあると考えられる。
海外進出も非常に順調と言え、海外取引メーカーは2社、海外売上高は15億円に達した。特に直近でM&Aしたエクセル・グループとサーテックカリヤは東南アジアやアメリカ・メキシコなどに生産拠点を持っているうえ、三井屋工業は単独でインド企業と提携した。日本メーカーに鍛えられた品質とコスト競争力への評価が高いことに加え、同社が企図する脱系列が海外では比較的容易な点も、海外進出に拍車をかける要因になっている。今後は、海外においてもグループ企業間のクロスセルを強化する考えである。なお、生産パートナーへ技術供与している北米に関しては、トランプ関税問題を避けるため中期経営計画には織り込まれていないが、直接進出を検討する可能性も出てきたようだ。このほか、高付加価値領域への進出では、総合提案やリサイクル技術、完成品など高付加価値領域の売上高目標30億円に対して27億円を達成した。また、フューチャーファクトリーでは、三井屋工業東北工場の事例の外部展開を進め、DXコンサルタント1人当たり売上高を2%増加、プロフェッショナル・ソリューション事業の外部売上高は15億円に達した。ホールディングスの企画機能強化では、経営人材を7名へと増やすことができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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