景気動向次第で商品の売れ行きも変わる(「俺がカブ番長!」第5回より。イラスト/スズキサトル)
個人投資家にとって、個別企業の業績などを見極める「ファンダメンタルズ分析」は銘柄選びの基本。とはいえ、個別企業の業績も景気全体の影響を受けるのは必至。「いくら個別企業の分析を重ねても、その企業が属する業界、ひいては日本経済全体、さらには世界経済の動向を無視しては株価上昇も望めません」というのは、個人投資家向けレポートを提供するカブ知恵代表・藤井英敏氏だ。
2008~2009年にかけて雑誌『マネーポスト』誌上で連載された情報量満載の株コミック『俺がカブ番長!RETURNS』の監修を担当した藤井氏は、個別株への投資であっても経済全体を見渡す重要性を説く。
「銘柄選びには、大きく分けて『ボトムアップアプローチ』と『トップダウンアプローチ』があります。ボトムアップは『ミクロ』、つまりは個々の企業の動向を細かく見て投資判断をする手法。それに対して、トップダウンは『マクロ』、簡単にいえば経済全体の流れを見渡して個別銘柄を探し出す手法です。株価というのは個別の材料だけでなく、景気や為替といった大きな流れにも左右されるため、『木を見て森を見ず』では通用しないのです」(藤井氏、以下同)
グローバル化が進む現状では、国内で製造・販売する企業であっても、その原材料のすべてを国内で賄えるわけではない。海外から調達すれば、原材料の高騰はもちろん、為替が円安になっていれば、その分輸入コストはかさみ、収益が圧迫される。昨今の物価高が「海外の原材料高+円安」を起因としているように、日本で生活するうえで世界情勢は決して無視できないのだ。
まして2025年には、世界最大の消費大国である米国のトランプ大統領が各国に関税の引き上げを迫り、米国への輸出が厳しさを増すのは必至の情勢といえる。
「自動車をはじめ、いくら日本製品の品質がいいからといっても、関税がかけられれば収益を圧迫する要因になる。この企業の製品やサービスがいいと“木”ばかり見ても、世界情勢という“森”を見なければ企業の成長も見通せない。個別銘柄に投資するうえでも、まず“森”を見て、一本一本の“木”に思いをめぐらせる必要があります。そのためにはマクロ経済の基礎は知っておくべきでしょう」