転売サイトへの返金請求ですが、サイトから「入場券の有償譲渡禁止の表示を理由に入場できないことを承知で買った」と反論がありそうです。しかし高額の買い取りですから、チケットの紙自体の入手ではなく、入場できることを目的にした売買であるのは明らかです。入場できないのは売買の目的を達成できない契約不適合になり、契約を解除して、代金の返還を請求できます。
なお民法には、不法な原因のために給付をした者は、給付したもの(不法原因給付)の返還を請求できないという規定があり、これを理由に抵抗されるかもしれませんが、不法の原因は転売サイト側にあるうえ、あなたは転売サイトとは知らなかったので返還請求できるでしょう。また、入場できないことやその可能性を知りながら売り付けた場合には不法行為になり、代金相当の損害の賠償請求も可能です。
しかし、連絡が取れない相手に返金を求めることは事実上不可能です。不正転売をした転売サイトが反復して転売行為をしていれば法的制裁を受けるべきです。警察に相談するのがよいでしょう。あなたは転売目的で購入したのではないので処罰されることはありません。警察の捜査で転売サイトの運営者がわかれば返金請求も可能です。
正規の販売ルート外でチケットを購入するときは、券面の表示に充分注意してください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2025年9月25日・10月2日号