厚労省の対応も歯切れが悪い
近年、“新しい働き方”として持て囃されてきたスキマバイト(スポットワーク)をめぐり、大きな問題が持ち上がっている。企業側の都合で仕事がキャンセルされるケースについて、厚労省が注意喚起に動き、業界側も改善を打ち出すが、過去のキャンセル分の休業補償について、最大手のタイミーと厚労省の見解に大きな隔たりがある。
タイミーは本誌「週刊ポスト」の取材に対し、厚労省が示した指針について、「過去に遡って休業手当を支払う必要があるとの考えを示すものではない」と主張。一方の厚労省は本誌の取材に対し、リーフレットは「従前からの留意事項を記したもの」であり、個々の事例において具体的にどの時点で労働契約が成立するかについては「民事上の問題で、最終的には司法で判断される」と回答した。最終判断には踏み込まないものの、過去の休業補償について「支払わなくていい」とする、タイミー側の解釈とは見解を異にしていることがわかった。
休業補償を求めるのは当然の権利だが、『それって大丈夫?スキマバイトQ&A』(旬報社)を執筆した中村和雄弁護士は「スキマバイトには労働者が声を上げにくい構造がある」と語る。
「働いている人に話を聞くと、働き先やスポットワーク事業者に苦情を言うと評価が悪くなり、次の仕事が見つかりにくくなることを心配しています。ドタキャンされて休業手当を支払ってもらえないとの相談もありますが、短時間のスキマバイトだと一人当たりの休業手当の額がそれほど大きくなく、『これくらいなら我慢しよう』と諦める人も多い」
日雇い派遣の代わり?
スキマバイト事業者だけでなく、厚労省も責任を問われる立場だ。「非正規労働者の権利実現全国会議」(『スキマバイトQ&A』を編著)の事務局長を務める村田浩治弁護士は、5月にこの問題について厚労省にヒアリングを行なった。そこで感じたのは「歯切れの悪さ」だった。