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【注目トピックス 日本株】GSI:札幌本社に持つ独立系SI企業、DX需要下で着実成長続くなか配当利回り4.5%超え

*19:31JST GSI:札幌本社に持つ独立系SI企業、DX需要下で着実成長続くなか配当利回り4.5%超え
GSI<5579>は、札幌を本社に全国5拠点(東京・大阪・福岡・仙台)でシステム開発を行う独立系SI企業である。事業の中心は、常駐開発支援サービスで、主にメーカー系・ユーザー系・独立系システム会社(SIer)への派遣契約・準委任契約を中心としたサービスを展開している。情報通信業界向けシステム開発に強みを持っており、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)アライアンスパートナーとして認定され、安定した継続受注を確保している。また、受託開発サービスも展開しており、主に首都圏の顧客から依頼される新規開発・保守開発等を受託し、成果物を納品している。そのほか、パッケージ販売サービス、Web制作サービス、広告制作サービス、グラフィック制作サービスを展開するIT事業やITに関連した就労継続支援B型事業所を運営する就労支援事業も展開している。国内子会社を設立し、事業領域の拡大、収益の多様化、社会全体の多様性や包摂性を高める一助となることを目指す。

同社の強みは、大手SIerを通じた様々な業種のエンドユーザー企業のシステム開発を経験している点に加えて、派遣・準委任を中心とする常駐開発において「プロパー中心の開発体制」と「高い技術ノウハウ」を持っている。他社では外部パートナー(BP)への依存度が高く、プロジェクトの安定性に課題が生じやすいのに対し、同社はプロパー社員を中心にチームを構成。統率の取れたコミュニケーションと品質管理が顧客から評価され、顧客から直接指名されるケースも多いという。この「人による品質」は同社の最大の資産であり、離職率の低さ(定着率87%)、平均残業時間13時間、有休取得率87%という職場環境の良好さが支えている。研修制度も同社の強みであり、最長4カ月の社内研修を全員に実施。経験者でも最低1〜2カ月は社内教育を経てから現場作業に入る徹底ぶりとなる。未経験からの育成と中堅層の底上げが両立しており、長期的な品質確保と人材供給力の安定につながっている。加えて、海外ITエンジニアも積極的に育成し、日本で活躍させている。

2025年3月期売上高に対する顧客企業割合は、メーカー系5%、ユーザー系32%、独立系51%、エンドユーザー12%。また、業種割合は、情報通信業50.3%、建設業17.2%となるなか、製造業・金融業・保険業、サービス業など幅広い業種に広がっている。

2026年3月期第1四半期の業績は、売上高1,142百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益95百万円(同20.8%増)と2桁増収増益で着地した。新規顧客の獲得に加え、既存顧客との継続取引及び追加案件の受注が堅調に推移しており、これにより事業基盤を着実に強化している。ITエンジニアの「労働力」と「技術力」を提供する労働者派遣契約や準委任契約による常駐開発支援サービスの人員数が増加し、高単価顧客への配置転換を積極的に進めたことで、一人当たりの平均単価も上昇した。ほか、就労支援事業では3事業所の登録者数及び利用者数が着実に増加基調にあり、黒字転換となった。通期では売上高4,491百万円(前期比5.9%増)、営業利益276百万円(同31.8%減)を計画。採用・教育・外注・広告宣伝への投資を強化し、将来の収益拡大に備える戦略的減益局面と位置づける。1Q進捗着地を見ると通期計画はやや保守的にも見えるか。

市場環境としては、DX投資の継続と人材不足の深刻化により、ITエンジニア単価の上昇が追い風となっている。IT業界全体では2020~2025年のCAGRが4.1%と堅調な拡大が見込まれており、同社の属するシステム開発領域も底堅い成長が期待できる。一方で採用競争が激化しており、優秀人材の獲得には一定のコストが必要となってくる。各社ともに今後も採用コスト上昇を前提にした体制拡充を続ける必要があろう。

今後の成長ドライバーは、常駐開発での単価上昇と新規顧客拡大、受託開発の拡充、フィリピン子会社の活用である。特に受託開発比率の引き上げを次期の重点テーマとしており、受託開発の上流工程は高単価となるため、若手人材の参画余地を広げることで収益性の底上げを図る。また、ネットキャッシュ数十億円規模の潤沢な資金を背景に、M&Aによる新領域参入も検討中。人材育成・開発支援に加え、業種特化型ソリューション企業やAI関連の買収が視野にある。そのほか、同社は環境配慮にも積極的で、ソフトウェア企業としては珍しくISO14001を取得。単なる認証ではなく「環境負荷を可視化できない領域でも意識を持つ」姿勢を経営方針に据えている点はサステナビリティ経営重視の姿勢がポジティブな評価を受けよう。さらに、フィリピン子会社は開発コスト削減と人材確保の両面を狙う。今後は国内受託案件を一部海外へ移管することで開発コストを抑制し、現地での開発体制強化を推進する構想を進めている。現地では応募数・人材層ともに厚く、教育投資によって成長余地が大きいとみているようだ。

株主還元については、配当性向30-70%・DOE5%以上を目標水準としている。業績連動型の安定配当を軸に据えつつ、M&Aや採用・教育投資とのバランスを重視する方針だ。IR活動面では、まずは出来高増加を優先課題とするなか、個人投資家層の拡大とともに、今後は東証への鞍替えを視野に流動性向上策を模索している。

総括すると、GSIは「プロパー社員」による品質の高さと、地方・海外拠点を組み合わせた柔軟な開発体制を武器に、堅実な成長を続ける企業である。社会貢献と事業成長を両立し、札幌発のIT企業として独自の地位を確立しつつあるなか、DX需要を追い風に人材獲得と受託拡大の両立に期待する一方、採用競争激化と外注費上昇が短期的な収益圧迫要因となる。今期は採用費などの増加で利益は前期比マイナスとなる見込みだが、将来投資への足場固めと考えると、配当利回り4.7%程度のインカムゲインをとりつつ成長フェーズを待てる状況となるため、時価総額の向上とともに同社の今後の動向には注目しておきたい。

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