神戸の女性殺害事件の報道を見てオバ記者は何を感じたか(時事通信フォト)
神戸で発生した女性殺害事件では、犯人がオートロックのマンションに侵入し、エレベーターに被害女性と同乗し、犯行に及んだという。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏が、自らもオートロックのマンションに住む身として、この事件に感じたことをつづる。
容疑者の行動の“脈略のなさ”
神戸の女性殺害事件の報道に触れるたび、日本中がイヤ~な気分になっているんじゃないかしら。何がイヤって、容疑者の行動の“脈略のなさ”なのよ。犯行のニュースが出た翌日に、東京の奥多摩で「確保!」。警察官に囲まれてうつむいて歩く姿がテレビ画面に映ったけれど、目を見張ったのは彼の髪色なの。目立つ“まだら金髪”で、その髪で罪を犯しているってことは、捕まる気満々ってこと? 防犯カメラも意識してないように見えるし。
もっとわからないのは、彼の表面(おもてづら)よ。2年前から勤務している東京の配送会社では、「仕事に対する姿勢は前向きで、取引先からの評判はよく、苦情は一度もなかった」と社長が評している。そんな男が、かつての勤務地があった神戸に夏季休暇で滞在している間に、20代の女性をつけ狙って、オートロックのマンションに“共連れ”で侵入し、エレベーターに同乗して、女性をはがいじめにして刃物を振り下ろす。その間、1分もかからなかったのでは。そして警察の調べで「(被害女性は)まったく知らない女性です」と供述していると聞くと、もう、何がなんだかわからない。
そりゃあね、生きていると人を憎むことってあるよ。身近でかかわる親きょうだい、夫婦、恋人。会社の同僚や、昔、自分をいじめた人。行動には起こさないけれどほんの一瞬だけ「殺す!」と思う瞬間が誰にだってあると私は思っている。でも、しないよね。憎いという気持ちがどれほど強くても、犯罪を起こしたあとの自分がどうなるかを考えると、実行になんて移せないもの。
しかも、容疑者は今回の犯行が初めてではない。3年前の2022年、神戸市内で女性に5か月間にわたってつきまとい、マンションに侵入して女性の首を絞めて有罪判決を受け執行猶予中だったとか。安定した職を得たら、ふつうおとなしくしてない?
まぁ、こんな事件を起こす人に「ふつう」を当てはめても仕方がないよ。それでも「盗人にも三分の理」で、彼なりの理由や理屈があると思いたいじゃないの。「自室に2柱の位牌があった」などと、情報が入るたびに彼の人となりが描けなくなるんだよ。おそらく身内のものであろう位牌を4畳半の部屋に置く心の持ち主が、はたして、なんの怨恨もない若い女性をスピード殺人するか?