中堅大学の総合型選抜も学力重視へシフトへ
この推薦入試での学科試験導入は、中堅大学ではどうなのだろうか。
難関大学と違い、中堅大学は従来、推薦入試で活動実績を評価する傾向があった。中堅大学は実学志向なので、社会人養成に力を入れる。そうなるとリーダーシップがある行動的な学生が欲しいから、活動実績がある学生を評価することになる。たとえば、部活やボランティア活動に取り組んできた学生はリーダーシップがあると推測でき、高い評価を得られるだろう。中には「ボランティア活動を評価する総合型選抜」をやっている中堅大学もあった。
しかし、そうやって活動実績が評価されて合格した学生たちが入学後、成績が伸び悩むケースもあり、方針は変わりつつある。
そのため、首都圏でも多くの中堅大学が「年内学力入試」に参入する。つまり、年が明ける前に「ほぼ学科試験の得点で合否を決める」推薦入試を行うということだ。一般選抜の前倒しという批判もあるし、中には「やりたくない」という大学もある。しかし、他の大学がやるとなればやらざるを得ない。
やらなければ、学力が高い学生を入学させるチャンスを逃してしまうからだ。とはいえ、この年内学力入試が10年後、20年後にどうなるかは分からない。推薦入試が拡大している理由は、将来的に受験生が減れば、一般選抜つまり、ペーパーの学科試験だけでは選抜ができなくなるからで、定員100人に対して、90人しか出願してこなくなれば、全入となり選抜はできなくなる。そうなってくれば、年内学力入試も機能しなくなる。一般選抜も年内学力入試も「選抜」ができなくなる未来がそのうちやって来るのだ。
そうなった時に入試で何が重要になってくるのか。それについてはまた別の機会に書いていこう。
■前編記事を読む:「総合型選抜のために海外の施設で泊まり込みのボランティアをする」 大学の推薦入試拡大に伴い「体験を売る業者」が増加、背景にある“勉強が苦手でも活動実績があれば合格できる”という幻想
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。