才能は誰にだってあるという
自分には才能がないというくだらない言い訳はやめろ
いま世界でもっとも注目を集める実業家はイーロン・マスクだろう。電気自動車、宇宙開発、SNS、脳科学。次の時代を見据え、人類の未来そのものを事業領域にするスケールは圧巻だ。
特に「2029年までに人類を火星に送り、2050年までに100万人規模の火星都市を築く」と宣言している火星移住計画は彼の代名詞といえる。その計画を無謀だと指摘する声も多いが、彼はもちろん本気だ。急ピッチで大型ロケットの開発を進め、飛行試験を繰り返している。もちろん飛行試験が簡単に成功するはずがなく、現時点では失敗の連続だ。打ち上げたロケットを爆発大破させる光景はもはやお馴染みだろう。1回の打ち上げ失敗で何十億円もの費用が吹っ飛ぶのだが、そのたびに彼は「いいデータが取れた」と涼しい顔だ。見ていて爽快ですらある。
彼は働き方からして規格外だ。「週80時間労働は普通」と公言する筋金入りのハードワーカーである。週40時間という日本の労働基準の倍。過労死ラインとされる月100時間の残業すら彼にとっては通常運転だ。かつては週120時間以上働いていたこともあるという。起きている時間のほとんどを仕事につぎ込んでいたわけだ。
なぜそんな無茶苦茶な働き方ができるのだろうか。言うまでもない。自分の事業に無限の夢を見出しているからだ。そして彼の真のすごさは、その夢を徹底的に追求できる無尽蔵のエネルギーにある。その異常なまでのエネルギーで突拍子もない構想を次々と実現させてきたのだ。
現代最強のイノベーター。イーロン・マスクのことをそう評する人も少なくない。先見性、実行力、バイタリティ。たしかに彼は特別な才能の持ち主だ。でも心してほしい。彼だけが特別なわけじゃない。あなたにも類まれな能力がある。
たいして頑張っていないのに不思議と結果が出ること。みんな面倒くさがるが自分にとっては苦痛でないこと。あるいは、なぜか周りから頼られるようなこと。そんな“人とのズレ”こそが才能の正体である。
イーロン・マスクにとってそれはテクノロジーや起業だ。パブロ・ピカソは絵画だった。大谷翔平は野球である。彼らの才能はわかりやすい。派手なのだ。一方で可視化されにくい才能もある。
興味のある情報なら延々とネットサーフィンをしてどこまでも深掘りできる――。
それはリサーチ力という才能だ。何時間でも友人のグチや相談を親身になって聞いてあげられる――。それもまた傾聴力というレアな才能だろう。
自分には才能がない。そう卑屈になる人を見るたびに憐れに思う。勝手に線引きして自分の可能性を閉ざすのだから憐れというしかない。そんな人は「才能」というものを過剰に神格化してしまっているのだろう。でもそうではないのだ。ついやってしまうこと。夢中になってしまうこと。それが才能だ。大した話じゃない。
自分を信じて夢に向かって走る。人生においてそれにまさる喜びはないだろう。だから夢に向かってハードワークしよう。イーロン・マスクのようなムチャな働き方をしろと言いたいのではない(心身ともにクラッシュするからやめろ)。でも、ハードワーク抜きに成功した人なんていないのもまた事実である。夢があればエネルギーが湧き上がる。そしてそれを加速させるには一にも二にも体力だ。
【POINT】
自分を信じろ。夢を持て。物を言うのはハードワークだ
*堀江貴文著『体力が9割 結局、動いた者が勝つ』(徳間書店)より一部を抜粋して再構成。
(第2回に続く)
【プロフィール】
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)/1972年、福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、多数の会員とともに多岐にわたるプロジェクトを展開。『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『多動力』(幻冬舎)、『時間革命』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン』(徳間書店)など著書多数。
