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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

経済的損失は2880億円と推計、日本人の“約3人に1人”を悩ませる頭痛のメカニズム 生活に大きな支障をきたすのに治療を受けていない人が多い理由【専門医が解説】

脳の画像診断だけで「異常なし」と診断されることも

 私の病院で運営する頭痛センターには、多くの慢性頭痛の患者さんが来院しますが、緊張型頭痛の患者さんが約25%であるのに対して、片頭痛の患者さんは60%です。片頭痛を抱えていると生活に大きな支障をきたすことが多いはずですが、実際は治療を受けていない人がたくさんいます。

 というのも、頭痛はいわゆる“一般的な症状”なので、慢性的な頭痛であっても病院を受診することをためらう心理が働くことが少なくありません。また、受診しても頭痛の専門医ではない場合、脳の画像診断(MRIなど)だけを行なって「異常なし」と診断されるケースも多いという現状があります。片頭痛は脳の機能的な異常が主体であり、脳の形が変わる異常ではないため、画像には写らないからです。そのため、問診で痛みを詳しく把握することが重要になります。

 画像診断で「異常なし」と診断された場合でも、痛みがあるので鎮痛剤を処方されることが多いのですが、あまり効果が得られないという症例も多くあります。逆に、鎮痛効果がある薬を飲み続けることで、「薬物乱用性頭痛」という難治性の頭痛になってしまう恐れもあります。

 近年、片頭痛のメカニズム解明に伴い、治療は大きく進化しています。特に注目されるのは、前述のCGRPの働きを抑えることを目的とした新しいタイプの予防薬である抗CGRP抗体薬(CGRP関連抗体薬)です。これは、片頭痛の原因物質であるCGRP、またはCGRPが結合する受容体の働きをブロックする注射薬で、従来の予防薬が効かなかった患者さんにも高い有効性が示されています。

 長引く頭痛に悩んでいる方は、「頭痛くらいで」と諦めたり、自己判断で市販薬を飲み続けたりせず、まずは頭痛専門医のいる医療機関を受診することをお勧めします。正しい診断と最新の治療法によって、頭痛のない快適な日常生活を取り戻すことは、十分可能な時代になってきているのです。

「片頭痛のメカニズム解明に伴い、治療は大きく進化しています」と語る竹島医師

「片頭痛のメカニズム解明に伴い、治療は大きく進化しています」と語る竹島医師

■後編記事:多くの人々を悩ませる「片頭痛」治療薬の最前線 セロトニン受容体に作用する「トリプタン系薬剤」使用時の注意点 予防薬にも新たなトレンド【専門医が解説】

【プロフィール】
竹島多賀夫(たけしま・たかお)/富永病院院長兼脳神経内科部長兼頭痛センター長。1984年鳥取大学医学部卒業後、同大学大学院博士課程修了、鳥取大学医学部附属病院脳神経内科助手などを経て、米国国立衛生研究所(NIH)へ留学。帰国後、鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経内科部門講師・准教授を歴任。2010年富永病院脳神経内科部長、頭痛センター長に就任、2011年同病院副院長を経て、2025年より富永病院院長に就任。

取材・文/岩城レイ子

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