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名医が教える生活習慣病対策

自覚症状がないため放置されやすい「脂質異常症」 コレステロールの異常が動脈硬化を引き起こし心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める【専門医が解説】

LDLが肝臓で作られたコレステロールを運ぶ一方、HDLは血管に溜まった余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を担っている

LDLが肝臓で作られたコレステロールを運ぶ一方、HDLは血管に溜まった余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を担っている

 コレステロールの数値が気になるビジネスマンは多いだろうが、コレステロールの異常で発症する脂質異常症は自覚症状がないため放置されやすい。糖尿病患者は、悪玉のLDLコレステロール値が高くなくても動脈硬化が進みやすいという──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、糖尿病の研究を長年続ける昭和医科大学医学部・山岸昌一教授が解説する。【脂質異常症と動脈硬化の関係・前編】

コレステロールは人間に必要不可欠な成分

 健康診断の血液検査で中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高いと指摘された人は多いのではないでしょうか。脂質の数値が高い場合、以前は高脂血症と言っていましたが、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が少ないことも問題であるという観点から、現在では2つのコレステロールの異常を合わせて「脂質異常症」と呼んでいます。

 脂質異常症は動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気のリスクを高めます。ただし、脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、検査数値で異常を指摘されても治療せず放置している人も多いはずです。

 中性脂肪やコレステロールは悪いイメージがありますが、この2つは体を構成・維持するために必要不可欠な成分です。中性脂肪はエネルギーの貯蓄や保温効果のほかに、内臓を衝撃から守るショック・アブソーバーとしても働き、コレステロールは全身の細胞膜を構成する成分であり、各種ホルモンや消化に関わる胆汁酸の材料にもなります。

 体内のコレステロールの70~80%は肝臓で産生されており、残りは食品から摂取されています。肝臓で作られたコレステロールを血液に乗せて全身の細胞に運ぶ役割を担っているのがLDLコレステロールです。

 LDLコレステロールが過剰になると、血管の内側にある血管内皮細胞からコレステロールが入り込み、血管に脂肪の塊(プラーク)を形成します。LDLコレステロールが悪玉と言われるのは、動脈硬化に繋がるからです。コレステロールの塊が大きくなり粥腫(アテローム)が形成され、破れると心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。

 LDLコレステロールが過剰になると粥腫を生じますが、粥腫に溜まっているコレステロールを掃除して肝臓に戻す働きをしているのが善玉のHDLコレステロールです。LDLコレステロールが肝臓から末梢にコレステロールを運ぶのに対して、HDLコレステロールは逆向きにコレステロールを末梢(血管)から肝臓に戻す働きをするので、この経路は「コレステロール逆転送系」とも言われています。

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