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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】kubell Research Memo(9):「中小企業No.1 BPaaSカンパニー」のポジションを目指す(2)

*13:29JST kubell Research Memo(9):「中小企業No.1 BPaaSカンパニー」のポジションを目指す(2)
■kubell<4448>の成長戦略

1. 重点戦略
(1) コミュニケーションプラットフォーム戦略
コミュニケーションプラットフォーム戦略の中心には「Product-Led Growth(PLG)」というアプローチがある。プロダクトそのものを通じて顧客を獲得し、成長を促進するという考え方であり、従来の「Sales-Led Growth(SLG)」モデルとは異なる。具体的には、PLGモデルにおいては、まず無料で使いやすいサービスを提供し、その利用データを活用して潜在的な有料顧客を特定し、商談へとつなげる。同社では、チャットを用いた高効率な顧客対応を重視し、業界ごとのニーズに対応したビジネスチャットのモデル化を進めている。これは、国内市場における同社の競争優位性を生かすとともに、マーケティングとセールスプロセスの質を高める狙いがある。また、業務プロセスにおける深い業界理解を強みとして、国内市場において圧倒的な市場シェアの獲得を目指している。PLGモデルを推進することで、AIを活用したデータ分析を進め、広告宣伝費を抑えつつも大規模なユーザー拡大を可能にしている。この戦略により、「Chatwork」はビジネスチャット市場において次世代のBPaaSに最も適したプロダクトとして進化を遂げようとしている。

(2) BPaaS戦略
BPaaS戦略は、ビジネスプロセスそのものをクラウドサービスとして提供し、顧客の業務効率を劇的に向上させることを目指している。BPaaSは従来のBPOとは異なり、SaaSを活用した高度な業務自動化を提供する点が特徴である。業務プロセスそのものをDXすることで、管理コストを大幅に削減できる。同社のビジネスチャットを中心としたプラットフォームにおいて、API連携を通じた業務自動化エンジンを構築し、オペレーション工数を最小化することで、より効率的なサービス提供ができる。また同社は、「Chatwork」を93万社以上の企業が使用していることを背景に、BPaaSの展開を進めている。BPaaSは、社内のDX人材が不足している企業に対しても有効であり、DXの推進が進まない企業に対して、クラウド経由で業務プロセスを提供している。さらに、非専門的な業務から高度な専門業務に至るまで、幅広いサービスをワンストップで提供することを目指しており、これにより同社は、BPaaS市場における競争優位性を確保しつつ、収益を拡大する方針である。

(3) インキュベーション戦略
インキュベーション戦略は、ビジネスチャットやBPaaSに次ぐ第3の成長の柱の創出を目的としている。この戦略は、同社が保有する圧倒的な顧客アセットとプラットフォームを最大限に活用し、AI技術を組み合わせることで、さらなる価値創造を目指す。顧客データの質的・量的拡大を図り、マーケティング効率の向上を目指すとともに、AIを用いた新規事業の創出を推進している。たとえば、ビジネスチャットに蓄積されたテキストデータを分析し、AIを活用したパーソナライズドなサービスを展開することで、顧客のニーズに応じた新しいサービスを提供している。また、同社は2021年度より「kubell BPaaSファンド」を設立し、CVCとしての役割も果たしている。このファンドを通じて、出資先企業の成長を促進するとともに、シナジー効果を狙った提携関係を強化している。特に2023年1月にミナジンを完全子会社化(ミナジンは2025年7月にkubellパートナーと統合)したことで、人事労務領域におけるBPaaSの提供が可能となり、今後さらなる投資機会の拡大が期待される。このように、インキュベーション戦略は、既存事業の強化に加え、非連続な成長の柱を創出し、同社の将来的な収益基盤を強固なものとする重要な施策となっている。2024年11月には福利厚生プラットフォームを提供する(株)miiveとの資本業務提携を公表しており、インキュベーション戦略の柱の1つである福利厚生分野での取り組みの加速が期待される。

2. サステナビリティ・ビジョン
同社では、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションの下、サステナビリティ・ビジョンを掲げている。人々が働く時間を単なる生活の糧を得る手段にとどめず、夢や志の実現に向けて創造性を発揮し、楽しみながら働ける社会の実現を目指す。これにより、働く人々の人生を豊かにし、その結果生み出される価値が社会全体をより豊かで持続可能なものへと変えるという考えを持っている。ビジョンを実現するために、ステークホルダーとの協力を重視しており、共創によって持続可能な社会の実現を目指す。

■株主還元策

事業拡大中につき、当面は利益を必要投資に充当する方針

同社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と位置付けており、配当に関しては内部留保とのバランスを考慮しつつ、適切な配当を行うことを基本方針としている。ただし、現時点では同社は成長過程にあると認識しており、内部留保を充実させ、収益力の強化や事業基盤の整備を目的とした投資に重点を置いている。このような投資によって、将来的に安定した継続的な利益還元が実現できると考えているため、配当の実施については現時点では未定である。

一方で、株主優待制度においては、同社の有償提供サービスであるパーソナルプランを1ID無料で提供する特典があり、株式保有期間中はその月額料金が無償となる。より多くの株主に同社のサービスを利用してもらい、同社への理解を深めてもらうことを目的として、毎年6月30日及び12月31日時点で株主名簿に連続して6ヶ月以上記載されている株主を対象に、1単元(100株)以上を保有している場合に適用される。なお、パーソナルプランは既にビジネスプランへと統合されているが、株主優待としては引き続き提供されている。

同社の株主還元策は、現段階では直接的な配当を行わず、成長に向けた投資を優先する一方で、株主優待を通じて株主の長期的な支援を促し、同社への理解と支持を深める施策を展開している。この戦略は、将来的に安定的な利益還元につながるという考えに基づいている。当面は先行投資に資金が必要な状況であることから、投下資金に対する将来のリターンに着目すべきと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)

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