警察庁に向けてのアピールの側面も
今回ホール4団体は、広告ガイドラインを逸脱したホールに対する是正勧告の強化を発表した。これまでは違反したホールの店舗担当者に通知文書を送る形で是正勧告をしていたが、12月1日以降はホールを運営する法人の経営代表者にも文書で通知する形になるという。
「ホールのイベント告知や店内ポスターの掲示などは、そのホールの責任者の判断で行われることも多い。自店舗の売上を増やすため、店長の独断でルール違反の広告宣伝をするケースもあるということです。そのようなルール違反があった際、店舗だけでなく経営代表者にも通知すれば、法人全体で問題に取り組まなくてはならなくなる。今回の是正勧告の強化は、“店長の暴走”を防ぐという意味合いもあると言えますね」
広告宣伝ガイドラインの遵守は、パチンコホール業界全体で取り組まなければならない事情もある。
「パチンコホールは警察庁の管轄であり、つねに警察サイドから射幸性が高くなりすぎないように監視されています。2011年以降に広告宣伝のルールが厳しくなったのも、震災後の自粛ムードということもありますが、当時のパチンコホールの広告宣伝がエスカレートしつつあることについて警察サイドが問題視していた状況もあったわけです。
そんななか、業界団体が協力して広告宣伝ガイドラインを制定し、業界をあげて健全化の方向に進んだ。警察庁もその取り組みを高く評価し、広告宣伝解禁の許しが出たという形です。もし再びルール違反を犯すホールが続出すれば、また警察サイドから広告宣伝を禁止されてしまう可能性も出てくる。4団体がルールを破ったホールに対する是正勧告を強化したのは、いま一度業界全体の足並みを揃えるためでもあるのでしょう」
さらに、ホールが広告宣伝のルールを守ることが、結果的にパチンコ・パチスロの出玉規制の緩和にもつながっていく可能性もあるという。
「遊技機の出玉性能に関するルールもまた、警察庁の意向で決まる部分が大きい。現状のパチンコもパチスロも、以前に比べると出玉性能に関する規制は緩和されており、射幸性が高い機種も増えています。射幸性が高い機種のほうが人気になりやすい傾向があるなか、ホールにとって現状は好ましい状況と言えます。そして、広告宣伝ガイドラインの制定を含めて、業界全体で健全化を図っていることが警察庁に評価され、出玉規制の緩和につながっていると見ることもできます。それこそ今回の“是正勧告の強化”についても、単純に違反ホールを業界内の自主規制で取り締まるだけでなく、自浄作用が働いているということを警察庁に示す意図もあると言えるでしょう」
ホール関連4団体は、広告宣伝是正勧告事例集としていくつかの実例を紹介している。後編記事【《パチンコホールの広告宣伝》「レインボーで設定を示唆」「“アンコウ”の隠語」「キャラクターの誕生日イベント」…是正勧告強化の一方で後を絶たない違反事例の数々】では、後を絶たない違反事例について紹介する。
(後編記事につづく)