*09:43JST モロゾフ:焼菓子軸への転換期にある老舗洋菓子メーカー
モロゾフ<2217>は、洋菓子製造販売を主力とし、喫茶・レストラン事業も展開する老舗洋菓子メーカーである。基本ブランド「モロゾフ」の伝統を守りながら、「ガレット オ ブール」「太陽のガレット」「CUSTA」「ガレット・ネージュ」など様々なブランドを展開している。百貨店チャネルを中心に、量販店、駅・空港、EC、喫茶と複数チャネルを有し、贈答需要と日常需要の双方を取り込むビジネスモデルを構築してきた。店舗数は、自社運営店舗(直営店・モール 17店、駅ビル 28店、百貨店 133店)、取扱店舗(その他量販店等)1,151店・喫茶店 28店で提供している。
商品グループ別売上構成では、バレンタイン21.7%、チョコレート11.2%、クッキー16.9%、マドレーヌ等7.2%、中元・歳暮ギフト13.1%、プリン・ゼリー12.0%、ケーキ4.9%、レトルト4.8%、その他8.2%となっている。また、チャネル別売上構成では、百貨店48.6%、量販店22.9%、駅・空港等9.5%、通販・ネット販売5.3%、その他2.5%、喫茶5.9%、鎌倉ニュージャーマン(子会社)3.1%、ビジュアル香港(子会社)2.2%。
投資家目線で一定の競合には国内上場の不二家、非上場・外資系ではゴディバやピエール・エルメなどが挙げられるが、同社は「高級すぎず、リーズナブルな」価格帯と、全国百貨店網を背景とした安定した販売基盤に強みを持つ点が特徴である。顧客層は百貨店来店客を中心とした中高年層・ギフト需要が厚い一方、焼菓子を軸に量販店・駅ナカ・土産需要と若年層への広がりも志向している。足元では百貨店比率が売上の約半分を占めており、構造的には成熟市場への依存度が高いものの、同社はチャネル分散と商品ミックスの転換によって成長余地を模索している段階にある。
2026年1月期第3四半期累計(2~10月)の連結業績は、売上高22,255百万円(前年同期比0.4%減)と小幅減収にとどまったものの、営業損益は202百万円の赤字となった。同社の収益構造は歳暮ギフト、クリスマス、バレンタイン等の贈答需要が集中する第4四半期(11月~1月)に利益の大部分を稼ぎ出す構造である点には留意が必要である。売上面では、バレンタイン商戦が前倒し傾向となったことや、消費者の節約志向の影響により洋生菓子等の自家需要の低迷がみられたものの、新ブランドやイベントの展開を進め、クッキーなどの焼菓子の売上獲得に努めたことで国内は堅調に推移した。ただ、カカオを中心とした原材料価格の高騰、賃金引き上げによる人件費増、物流費の上昇に加え、船橋の物流機能を外部委託へ完全移行したことに伴う諸費用の計上が重なった点が営業赤字の主因となっている。
価格転嫁については、値上げや商品の設計変更を含む内容量調整を段階的に実施してきたものの、現時点ではコスト上昇を完全には吸収できていない。特に百貨店チャネルでは価格感応度への配慮が必要であり、急激な値上げは買い控えを招くリスクがある。このため、同社は値上げ以外の施策として、生産性向上、物流効率化、商品構成の見直しによるミックス改善に注力している。季節性の観点では、バレンタインや歳暮を含む第4四半期の比重が高く、第2・第3四半期が相対的に弱くなる構造は従来から変わっていない。したがって、通期での収益確保可否は4Qの需要取り込みが鍵となる。今期計画も売上高35,920百万円(前期比0.3%減)、営業利益1,030百万円(同50.0%減)を見込んでいる。
今期は中期経営計画「つなぐ ~next stage 2031~」のStep1最終年度となっている。上記業績面に直結しているが、売上面では一定の成果を上げたものの、想定を大幅に上回る原材料価格の高騰が利益面を直撃している。Step1期間中の原材料仕入れ価格の高騰額は31億円となったのに対し、Step1期間中の原材料価格高騰対策の総額は13.5億円となり、価格高騰に追い付いていない。Step2以降、さらなるコスト抑制対策が課題となってくる。ただ、2032年1月期に連結売上高410億円、営業利益30億円(営業利益率7%以上)と過去最高水準の達成を掲げている。成長ドライバーとしては、焼菓子の強化、新ブランド・新プロダクトの創出、設備投資による生産性向上が中心である。「市場のニーズ」と「モロゾフの強み」が最も高く一致する分野が「焼菓子」で、高品質な「生産設備・技術」や長年培った「商品開発力」が最も活かせる領域となるようだ。焼菓子強化については、個人投資家向け説明会でも経営トップの強いコミットメントが示されており、同社は既存ブランドの深化と並行して、新たなプロダクトブランドの企画・開発を進めている。約83億円を投じた「新船橋工場」や「西神第2工場改修」は順次稼働段階に入っており、今後は投資回収フェーズへの移行が焦点となる。
チャネル戦略では、百貨店を基盤としつつ、量販店・駅空港・ECの成長余地を取り込み、比率の緩やかな分散を志向している。
株主還元については、連結配当性向40%程度、連結総還元性向50%程度を目安とし、業績に応じた配分を基本方針としている。優待制度も含め、安定配当を重視する姿勢は明確であり、利益回復局面での追加的な還元余地がどの程度あるかが今後の焦点となる。足元の赤字局面については、一時的な踊り場であると同時に、ビジネスモデル転換期に伴う痛みと捉えられる可能性が高く、投資家としては焼菓子売上比率、生産性指標、原材料コストの推移といったKPIの改善度合いを注目しておきたい。
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