信頼を失う「言葉のリスク」とは(イメージ)
会議でのプレゼンや上司への報告。同じように話しているのに、信頼を失ってしまう人と、着実に信頼を積み上げていく人がいる。その違いはどこにあるのだろうか。東京大学大学院で認知科学を研究し、駿台予備学校で3000人を動員する超人気講師となった犬塚壮志氏は、説明がうまい人は常に「言葉のリスク」を回避していると指摘する。犬塚氏の著書『「説明」がうまい人がいつも頭においていること』から一部抜粋・再構成して、その具体例を紹介する。
説明がうまい人に、「失言」がほとんどない理由
話す内容について、説明がうまい人は、常にリスクを回避しています。そのため、「失言」を聞くことはほとんどありません。
これは、説明がうまい人が生まれつき聖人君子だから、というわけではありません。私自身、失言の重大性を痛感した失敗経験があります。
予備校講師や研修講師として、私は何百人、何千人という多様なバックグラウンドを持つ人々を前に話をしてきました。生徒や受講者の中には、様々な地域から来た人、異なる価値観を持つ人、非常に繊細な心を持つ人がいます。
駆け出しの頃、私は講義冒頭にアイスブレイクのつもりで、ある地域を「田舎」と例に出して笑いを取ろうとしたことがありました。しかし、その瞬間、教室の最前列に座っていた生徒が、苦笑いしていたのを見逃しませんでした。彼が、まさにその地域の出身者だったのです。幸い、すぐに謝罪して事なきを得ましたが、あのときの冷や汗は今でも忘れられません。
このように、たった一つの不用意な言葉が、時間をかけて築き上げてきた信頼関係を、一瞬で破壊してしまう。その恐ろしさを、身を持って学びました。
それ以来、私は常に「この教室(会議室)にいる、最も繊細な一人」を頭の中に思い描き、その人に向けて話すようにしています。その人が聞いて、不快に思わないか? 傷つかないか? そう自問自答することで、言葉のリスクを最大限にコントロールするようになったのです。
説明がうまい人は、この「リスク回避」の思考を、無意識レベルで常に頭においています。だからこそ、その言葉は常に「安全」なのです。
