贅沢品というより「毎日使うセルフケアへの投資」
それでも、「わざわざなぜ高額のコームを選ぶのか」という疑問は残る。道満氏によれば、高額コームが支持されている背景に、「安さ」よりも「意味」や「価値」を重視するZ世代特有の消費意識があるという。
「静電気を抑える、摩擦を減らす、髪がまとまりやすいといった機能や効果がきちんと説明されていれば、(高額でも)価格に納得して選ぶ姿勢がみられます。価格そのものより、“その価格に理由があるか”が重要ということです」
そんなZ世代にとって、高級コームは贅沢品というより「毎日使うセルフケアへの投資」(道満氏)だという。
「朝の身支度や外出先で何度も手に取るものだからこそ、使い心地の違いが、そのまま一日の気分に影響します。“少し良いものを使うことで、生活の質が上がる”という感覚が、Z世代の中で静かに共有されているのだと思います」
その価値は、「自分のため」にとどまらず、「誰かを思って選ぶもの」にも広がりつつある。「自分では少し迷う価格でも、もらうとうれしい」「毎日使えるから無駄にならない」と、実用性と気遣いを両立できる点が、ギフトとしても静かな支持を集めている。
“持つこと自体が自己表現になるアイテム”が支持される
さらに近年、Z世代の間では「何を持っているか」が自己表現になりうる。機能性に加えてブランドが持つイメージや世界観が「自分らしさ」を表す一部となり、「それを選んでいる自分」にも意味が生まれる。チャームコスメやラブブグッズなど、“持つこと自体が自己表現になるアイテム”が支持されるのも、その流れだ。
「単なる機能性だけでなく、どのブランドを選んでいるかが、その人の感性や美意識を表す一種のシンボルになっています。その点で、リファやラブクロムは、コームが手軽に手に入る時代においても、“あえてそれを持っていること自体”に意味が生まれやすい、強いブランド力を持っています」
品質やデザインへの信頼に加え、SNS上での認知度や憧れのイメージが重なることで、「自分を大切にしている」「美容意識が高い」というメッセージを無理なく発信できる。高級コームの支持拡大は、Z世代の“意味のある消費”と、“ご自愛を肯定する価値観”を象徴する動きと言えるだろう。
「他人のため」ではなく「自分のため」に整えるという意識、「安さ」ではなく「納得できる価値」を選ぶ姿勢、そして「自分を大切にすること」を肯定する空気。高級コームが支持されているのは、Z世代の生き方や美意識に、いちばん近い場所にあるアイテムだからなのかもしれない。
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後編記事《【3万円超の商品も】“高級コーム”ブームのパイオニア「ラブクロム」の「価格を下げずに価値を伝える」戦略 会長は「“髪もファッションの一部”と思ってもらいたい」》では、コームブームのパイオニアである「ラブクロム」を展開するYC.Primarily(ワイシー・プライマリー)の代表取締役会長・下島千穂氏に話を聞いている。