田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国による鉄鋼・アルミ輸入課税、中国への影響は軽微か

 2016年における中国の輸出依存度(輸出/名目GDP)は17.48%で世界第116位である。ちなみに、日本は12.90%で第142位、アメリカは7.82%で第168位である(GLOBAL NOTEより、以下同様)。一方、台湾は59.07%で第12位、ドイツは38.52%で第34位、韓国は36.74%で第41位である。日本やアメリカほどではないが、中国も輸出依存度は十分低い方である。中国は主要原材料を輸入して、それを加工して輸出するといった加工貿易の比率がまだ相対的に高いことを考え合わせれば、輸出減が経済に与える影響はそれなりである。

 また、2017年の中国における品目別の輸出額(ドルベース)をみると、鉄鋼は全体の2.5%、非鉄金属は1.0%、金属製品は3.8%に過ぎない。それに、鉄鋼、アルミニウムがアメリカに売れなければほかに売ることになるだけだ。

 中国から見ると、今回の鉄鋼、アルミの関税引き上げは、政策面でも経済面でも、大きな影響はない。もちろん、表面的には激しく抗議するだろうが、実質的な影響が小さい以上、中国が自ら貿易摩擦を激化させるような反応はしないだろう。

 中国がアメリカから農産物の輸入を制限したり、アメリカへのスマホの輸出を制限したり、アメリカ国債を売り浴びせたりすれば、アメリカ経済が受ける影響は大きい。アメリカ国内でも、保護貿易でデメリットを受ける業界は少なくない。今後も、アメリカの保護貿易政策が重ねて打ち出される可能性はないとは言えないが、そうだとしても、見た目ほどには中国への影響は大きくないはずだ。それこそ、アメリカ第一主義に反するからだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。

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