田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国恒大集団がデフォルトしても人民元が高値を付ける理由

 足元の人民元高は海外からの資金流入が主な要因となっている。特に中国国債の“外国人買い”が進んでいる。11月の海外投資家による買入額は879億元(1兆5646億円、1元は17.8円で計算、以下同様、データはチャイナボンド)で1月以来の高水準であり、外国人の中国国債保有額は過去最大の2兆3900億元(42兆5420億円)に膨らんでいる(ブルームバーグニュースより)。

 内外の金利差、中国の強力な輸出力を背景とした貿易黒字の継続や、コロナ禍に対する防疫システムの強さなどが人民元買いの主な要因であるが、その背景には中国金融システムの高い安定性が評価されている面もあるだろう。

 欧米機関投資家が、「中国の経済、金融システムは先進国のシステムとは決定的に異なること」を理解していないはずがない。彼らの中には投機的な取引を行う者も当然いるが、そうした投資家の中には香港をはじめグローバル株式市場で売り仕掛けを行う者もいる。バイデン政権が対中強硬策を打ち出す中での恒大集団のデフォルト見通しは恰好の売り材料である。

 市場に溢れる情報と現実との間にはしばしば大きな乖離がある。そのことを中国人民銀行が警戒するほどの足元の“中国への資金流入”が示している。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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