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美容室閉店後のカット練習は「残業」になるかどうか? その境界線を弁護士が解説

美容室でのカット練習は仕事の一部として認められないのか?(イラスト/大野文彰)

美容室でのカット練習は仕事の一部として認められないのか?(イラスト/大野文彰)

 どこまでが仕事の範疇なのか──その解釈は単純なものではない。たとえば、美容室に勤務するスタッフが閉店後にカット練習する場合は、どう判断されるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 娘が2年ほど勤めていた美容室をやめました。労働時間が長い上、見習いだったため閉店後にカットの練習などがあり、深夜に帰宅することもしばしばありました。やめるときに未払いの残業代を請求しましたが、閉店後のカットの練習は残業に含まれないので支払わないと言われました。カットの練習は労働時間に入らないのでしょうか。残業代をもらうことはできますか。(埼玉県・54才・主婦)

【回答】
 閉店後のカット練習の時間が労働時間といえるかどうかという問題ですが、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。労働時間に当たるか否かは、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とするのが最高裁の判断です。

 労働時間は労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間ですから、所定の勤務時間外でも仕事開始に不可欠な準備作業は使用者の指示によるものと考えられ、その指揮命令下にある労働時間といえます。

 もっとも、仕事の一部でも時間外に使用者が知らないうちにしたものは指揮命令下とはいえないので、残業にはなりません。少なくとも黙認して、黙示的な指示を出していたことが必要です。

 娘さんの閉店後のカット練習は、まだ見習いの娘さんにとっては本職になるための技量アップが図れる利益があり、一種の研修といえます。

 研修時間が労働時間になるかどうかについては、参加しなくても職場で不利益な扱いをされることなく、昇進や賞与にも影響しないという自由参加のものであれば労働時間には当たりません。

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