*13:47JST 石光商事:国内深耕と欧州展開で描く次の成長曲線
【会社概要】
石光商事<2750>は、1906年創業の老舗の食品専門商社である。東京証券取引所スタンダード市場に上場している。主力事業はコーヒー生豆の輸入・販売であり、業務用市場において高いシェアを有する。また、加工食品、調理冷食、水産及び農産など多岐にわたる食品を取り扱い、国内外の食品メーカーや外食産業、量販店などに供給しているほか、海外へのコーヒーや抹茶などの嗜好品や日本食の輸出も行っている。また、中国、タイ、インドにも現法を有しており、経営理念「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」のもと、「世界の食の幸せに貢献する」ことをミッションに掲げ、持続可能な食品流通の実現を目指している。
【2025年3月期決算概要】
2025年3月期は中期経営計画「SHINE2024」の最終年度として、GHG削減や高利益率商品の拡充に注力するとともに成長も志向。売上は64,953百万円(前期比4.7%増)と増収を達成したが、原材料費高騰や一部海外子会社の収益悪化により営業利益1,557百万円(同5.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益888百万円(同15.4%減)と減益となった。
セグメント別で見ると、コーヒー・飲料事業は生豆価格と円安の影響で価格は上昇したものの価格競争を避けたことから販売数量が減少し、コーヒー飲料原料の売上高は減少した。一方、製品売上は販売価格改定が進んだことが功を奏し増収となった。結果、売上高は24,633百万円(前期比7.6%増)、売上総利益は3,497百万円(同1.3%増)となった。食品事業では、加工食品は商品群ごとの明暗が分かれ微減となるが、水産はエビフライ・イカ・アジフライなどが好調で増収、調理冷食は中食需要拡大により増加し、同事業全体で売上高22,396百万円(同4.7%増)、売上総利益3,026百万円(同5.0%増)を計上した。農産事業は、中国産ゴボウや葉物野菜、加工生姜などが堅調で売上高7,189百万円(同12.1%増)、売上総利益826百万円(同20.8%増)と伸長した。一方、海外事業は欧米・台湾での輸出は好調だったが、中国現地法人は国内経済不振により売上減となった。その結果、同事業全体での売上高は10,734百万円(同5.2%減)、売上総利益も同率で減少した。他方、収益基盤強化のため、2024年10月に東京・関西の焙煎子会社を統合し、アライドコーヒーロースターズとして再編した。
【成長戦略と株主還元】
同社は、2026年3月期を初年度とする中期経営計画「SHINE2027」を策定し、2028年3月期における連結業績目標として、売上高74,000百万円(2025年3月期実績:64,953百万円)、営業利益2,250百万円(同1,557百万円)、当期純利益1,270百万円(同888百万円)を掲げている。また、ROEは8~9%(同7.48%)、ROICは4~5%(同3.84%)、PBRは1.0倍以上(同0.56倍)への引き上げを図る。海外売上高比率は、2025年3月期の17%から2028年3月期には25%まで高める計画である。国内市場における展開としては、たとえばコーヒー・飲料事業の既存顧客に対し、輸入量国内屈指のゴボウや蓮根などの農産品や調理加工品、水産品など、食品事業の製品をクロスセリングするなど深耕を進める。海外展開については中国市場の深耕や欧州市場の開拓に注力しボリュームを求めていく構えだ。
経営基盤の強化では、グループ戦略の策定、インフラ統一による業務効率化、リスク管理の高度化を進める。また、コーポレートガバナンス体制を進化させるため、女性役員比率の向上を重点課題として取り組み、ダイバーシティ&インクルージョンを加速させる。さらに、人財育成体制の整備や人事制度改革も行い、従業員の自律的成長とエンゲージメントの向上を目指す。他方、脱炭素社会への対応として、兵庫県小野市に48億円を投じてグリーン焙煎工場を建設し(2027年3月稼働予定)、環境配慮型商品の安定供給体制を構築する。人権デューディリジェンスにも着手。サプライチェーン全体の持続可能性に貢献していく構えである。
株主還元については、2026年3月期より配当性向の目安を従来の連結25%から30%に引き上げる方針を掲げている。これにより、安定かつ持続的な配当を継続しながら、資本効率の向上と企業価値の最大化を両立させ、投資家との中長期的な信頼関係の構築を図る。2028年3月期には、1株当たり配当金を38円とする見通しである。
同社の成長戦略は、国内深耕と海外拡大を両軸とした事業ポートフォリオの再構築に加え、非財務領域を一体的に推進する点において、持続可能性を重視した構想と評価できる。今後の展開に注目しておきたい。
<HM>