*13:26JST ステップ Research Memo(6):2025年9月期は3期ぶりの過去最高益更新が視野に入る(1)
■今後の見通し
1. 2025年9月期の業績見通し
ステップ<9795>の2025年9月期の業績は売上高で前期比4.1%増の15,714百万円、営業利益で同4.6%増の3,674百万円、経常利益で同4.1%増の3,709百万円、当期純利益で同1.3%増の2,541百万円と期初計画を据え置いた。中間期業績は計画を若干上回ったが、2025年4月末の生徒数が前年同月比3.8%増とほぼ計画どおりに推移していること、当中間期に計上を見込んでいたシステム関連費用が下期に計上される可能性があること、2025年4月に4年連続で給与水準の引き上げを実施したことなどから、現状ではおおむね計画の範囲内で推移すると見ているためだ。ただ、夏期講習の状況やその後の生徒獲得状況次第では生徒数の増加により業績が上振れし、3期ぶりに最高益を更新する可能性もある。
なお、物価上昇や人件費負担の増加を背景に授業料の見直しを行う学習塾が多いが、同社は新年度も授業料は微調整に留める方針としている。ただ、高校2年生に続き1年生の割引制度も今後廃止する予定にしている。入塾希望が増加傾向にあり、満席となる学年や教科が増えているためだ。
(1) 小中学生部門
下期の新規開校予定はなく、既存スクールの充席率(募集定員に対する生徒数の割合)アップにより生徒数の増加を図る。2025年4月末の生徒数は前年同月比3.8%増と計画どおりの進捗で、内訳は小学生が同10.4%増、中学生が同2.4%増と小学生が好調に推移している。充席率は小学生が56.7%、中学生が85.4%となっており(2025年5月6日時点)、小学生の増加余地は十分にある。
小学生の伸び率が高い要因として、私立中学受験が過熱化するなかで、それに対抗するような形で「楽しく学ぶ」「勉強が好きになる」ということを大切にしようとする小学生が増えており、そのニーズを取り込めていることが背景にある。また、一部のスクールでは中学生のクラスがすぐに満席で埋まってしまうため、席を確保するため小学生から通塾するケースもある。中学生については、地域や学年により生徒数の動向がまだら模様となっている。全体の傾向としては、横浜・川崎エリアで順調に生徒数が伸びており、少子化の進行が目立つ県西・横須賀エリアのスクールで停滞感が出ているようで、今後もこうした傾向は続くと予想される。
なお、2026年度から高校の授業料無償化が決まっており、公立トップ校の志望生徒が多いSTEPへの影響に関心が集まっている。現時点ではプラス影響として、1) 家計負担の軽減による学習塾市場全体の活性化、2) 授業料の価格受容力(値上げ許容力)の拡大、3) 上位校・人気校志望のヒート化、が挙げられる。逆にマイナス影響としては、1) 低倍率となる公立校志望者の通塾控え、2) 私立校への進学者増加による早期(11月末)退塾者数※の増加、などが挙げられる。ただ、低倍率となる公立校を志望する生徒は比較的少ないため、影響は軽微と考えられる。
※ 神奈川県では11月時点の内申点で合格を出す私立校があるため。ただ、内申点対策として入塾する生徒が増える可能性もある。
(2) 高校生部門
高校生部門の4月末時点の生徒数は前年同月比2.9%増と伸び率は落ち着いてきている。2025年の大学合格実績で大躍進を遂げたわりに伸びが伴っていないように見えるが、これは各校舎の充席率が高水準となっており、受入れ余地が少なくなっていることが要因である。入塾希望は多いが定員に達しているため他塾に流れている割合が一定程度あり、機会を最大限に活かしきれていないと弊社では見ている。実際、2024年12月にすべての学年で全教科満席に達していた横浜校を増床したが(生徒数で100名程度の増加が可能)、2025年4月17日時点で既に全教科満席に達している。全教科満席の校舎数は1年生と3年生で3校舎、2年生で1校舎となっており、教科別で満席となっている校舎数はさらに多い。
このため、現在の課題は移転・増床できる物件の探索と校舎新設に必要な教師の確保となる。現役高校生で難関大学への合格を目指す高校生にとって、同社のブランド力は年々高まっている状況であり、体制さえ整備できれば成長余地は大きい。校舎展開については、現在需要に対応しきれていない横浜校の増床に加えて、校舎のない川崎エリアへの進出を視野に入れている。教師の採用については難関大学志望の生徒を相手にするため、一定以上の基礎学力が必要とされる。そうした人材は学習塾以外の業界に就職するケースが多いため、採用環境は厳しいのが実情で、教師の処遇向上を図るために今後、授業料の改定を検討しても良いのではないかと弊社では考えている。
(3) 学童保育
2016年から開始した学童保育部門については、まだ業績に与える影響は軽微なものの着実に成長し利益貢献し始めている。安心・安全で有意義な放課後ライフの実現、知的な成長の場をコンセプトに、知的好奇心を育む各種教育プログラム※を提供していることが特徴で、生徒や保護者からの評価も高く口コミ効果もあって、生徒数は2025年4月末時点で前年同月比22.0%増の611名と2ケタペースで伸長している。学年別構成比では、小学1年生が33.1%、2年生が28.5%、3年生が21.9%、4年生が16.5%となっており、いずれの学年も順調に生徒数を伸ばしている。
※ 楽しく学ぶ「探究プログラム」として、サイエンス、プログラミング、はば広教養、ことば/国語、英語、英検講座、英会話、算数、算数(思考)の9種類があり、「エンジョイプログラム(スポーツや趣味の習い事)」として手話、将棋、百人一首、音楽、ダンス、体育の6種類を用意している。
「湘南教室」「辻堂教室」「茅ヶ崎教室」が既に収益化しており、2023年春に横浜市で初めて開設した「白楽教室」についてはまだ1~3年生が主体で、既存教室の3年目と比較すると伸びは緩やかな状況だ。横浜市では各学校に無料で利用できる学童サービスが整備されていることが一因と見られる。ただ、STEPキッズの特徴である知的好奇心を育む多彩なプログラムを受けさせたいという保護者のニーズは一定数あることから、開設4年目となる2026年9月期に収益化することを目指している。
2025年3月に開校した「STEPキッズ湘南台教室」については、地盤である藤沢市内の教室でブランド力が高く、学童ニーズが強いエリアということもあって好調な滑り出しとなっており、3年目の収益化が視野に入っている状況だ。2026年以降の展開については、近隣に「STEP」があり教室を運営するにあたって必要となる人的リソースが確保できていることに加えて、学童サービスのニーズが強いエリアを優先して展開していくことを考えている。既存の教室の状況を見ると、学童ニーズの強いエリアのほうが入会状況が好調で、早期に収益化を実現できる可能性が高いためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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