*15:05JST NSW Research Memo(5):エンベデッドソリューションは好調を継続。サービスソリューションは前期比増
■NSW<9739>の業績動向
2. セグメント別概況
(1) エンタープライズソリューション
売上高は15,587百万円(前期比6.7%減)、営業利益は2,283百万円(同6.4%減)、営業利益率は14.6%(前期と同水準)であった。売上高については、システム機器販売が好調だった前期の反動などもあり減収となった。営業利益については、高収益案件の貢献はあったものの、減収に伴う売上総利益の減少により減益となった。また、受注高は15,995百万円(同4.5%減)であったが、受注残高は6,593百万円(同4.6%増)と堅調だった。
売上高の内訳を見ると、ビジネスソリューションの売上高は6,399百万円(前期比7.4%増)であった。製造業・物流業向けの自社パッケージの提供により堅調に推移したが、小売業向けは既存顧客は拡大したが大型案件の完了に伴い減少した。また、金融・公共ソリューションの売上高は7,284百万円(同7.3%減)となった。金融・保険業向けはカード決済分野が伸び悩み、官公庁・団体向けは業務ノウハウを生かし公共領域でのシステム開発を拡大し堅調に推移したが、サービスソリューションへ一部の業務を移管した影響があった。さらに、システム機器販売の売上高は1,904百万円(同34.0%減)の大幅減収であった。これは、特に前年同期に好調だった小売業向け顧客のPOSシステムが、システム一巡に伴い大幅に減少したためだ。
(2) サービスソリューション
売上高は14,362百万円(前期比2.7%増)、営業利益は831百万円(同95.7%増)、営業利益率は5.8%(同2.8ポイント上昇)となった。売上高については、IoTシステム構築関連が増加し増収となった。営業利益については、不採算案件の収束と増収に伴う売上総利益の増加により増益となったが、利益水準は計画を下回った。同セグメントは2020年3月期より独立したセグメントであり、事業拡大に向けた体制強化、新サービス展開のための先行投資などが影響し、他セグメントと比較し営業利益率が相対的に低い。不採算案件の処理は中間期で終了したが、事業が軌道に乗り同社全体の業績に貢献するには、もう少し時間がかかりそうだ。一方、受注高は14,818百万円(同5.1%増)となった。
売上高の内訳を見ると、クラウド・インフラサービスの売上高は9,930百万円(前期比0.2%減)となった。クラウドは、堅調なクラウド利用の需要に伴い構築関連が増加した。インフラ・その他サービスは、データマネジメント分野が好調に推移し、また運用系業務をサービスソリューションに集約するためのエンタープライズソリューションからの一部業務移管がプラスに寄与した。デジタルソリューションの売上高は4,432百万円(同9.8%増)となった。IoT・AIは、製造業向けIoTシステム開発が大幅に伸張し、利益面でも貢献した。さらに、Web・ECは既存の不採算案件への対応による機会損失が大きく、管理体制を強化した。
(3) エンベデッドソリューション
売上高は11,075百万円(前期比4.0%増)、営業利益は1,722百万円(同7.8%増)、営業利益率は15.6%(同0.5ポイント上昇)と、高水準の利益率を維持した。売上高については、オートモーティブ・モビリティ分野が好調に推移した。また、利益については、増収に伴う売上総利益の増加により増益となった。既存顧客の深耕により生産性が向上し、引き続き高い利益率を維持しているが、これは既述のとおり技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないためと考えられる。なお、受注高については11,235百万円(同3.1%増)と堅調である。
売上高の内訳を見ると、同社の得意分野であるオートモーティブは、SDV※分野の技術者ニーズが高く、好調に推移した。当面は、好調が持続する見通しだ。モバイルは主要顧客の開発フェーズが一巡したこともあり、減少した。インダストリは、エネルギー分野の伸長を中心に設備機器開発などが堅調に推移した。通信では、既存顧客からのネットワーク機器開発関連が拡大傾向で推移したことにより増加した。
※ Software Defined Vehicleの略で、ソフトウェアを変更することで価値や機能を増やしたり、性能を高められる自動車のこと。
(4) デバイスソリューション
売上高は9,002百万円(前期比0.5%増)、営業利益は1,278百万円(同8.7%減)、営業利益率は14.2%(同1.4ポイント低下)となった。売上高は、一部主要顧客のIT投資抑制などにより微増であった。利益については、投資抑制に伴う機会損失などが発生したことで減益となった。エンベデッドソリューション同様、既存顧客の深耕により生産性が向上したほか、技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないこともあり、引き続き高い利益率を維持している。同社は汎用的な分野ではなく個別分野で強いが、取引先が固定化している分野であるため、主要顧客との関係を深掘りして業績を伸ばしている。受注高は9,149百万円(同1.2%増)と横ばいに留まり、今後も半導体関連の動向を注視する考えだ。
売上高の内訳を見ると、一部主要顧客のIT投資抑制により売上の鈍化に影響が出ており、他の顧客の売上増加では十分にカバーできていない状況である。また、受注タイミングとリソースの調整が円滑に進まなかったため待機工数が発生し、利益面に影響した。半導体分野は特に専門性が高く、業界全体の慢性的な人材不足もあり、同社では、ベトナムをはじめ東南アジア中心に海外活用やパートナー連携を本格化している。また、台湾でもアライアンスを組み、海外企業からの案件獲得も目指し、新規開拓を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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