億り人たちが注目する高配当株の特徴とは(写真:イメージマート)
トランプ関税ショックに中東情勢……と先行き不透明ななか、企業業績にも影響が出始めている。一般的には業績悪化が見込まれる場合、株価は下落し、投資先としての魅力は減じる。しかし、興味深いのは業績の落ち込みが予想されるにもかかわらず、配当金を増加させる方針を打ち出す企業が少なくないことだ。個人投資家はこの現象をどう読み、どのように銘柄を選べば良いのか。高配当株投資の達人として知られる“億り人”たちにアドバイスをもらった――。
日経平均株価は3万8000円台で膠着し、上値の重い展開が続いている。だが、そうしたなかでも“買い材料”はあるようだ。
今期(2026年3月期)の企業業績は、関税や円高進行などによって上場企業全体の純利益合計が6期ぶりの減益に転じる見通し。しかし、「株探(かぶたん)」の調べによれば、配当予想を開示している約2050社のうち、増配を計画する企業はおよそ900社(減配予定は190社程度)に上るという。
「シンプルでわかりやすい」の利点
好決算が見込めないのに、配当を増やす予定の企業が多い“増配ラッシュ”となるのはなぜか。配当株投資の達人で“億り人”の配当太郎さんが分析する。
「東京証券取引所は昨年来、上場企業に資本効率の改善を求め、増配や自社株買いなどの株主還元策を推奨。企業側にもアクティビスト(物言う株主)対策として、幅広い個人投資家に安定株主になってもらうべく、増配によって個人マネーを取り込む狙いがあると思います」
いまや配当利回りの高い「高配当株」は個人投資家の人気を集め、個別株に投資できる新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠でも人気を博している。その魅力について、高配当株を主軸に据えて資産8億円超を築いた“億り人”で元消防士のかんちさんはこう語る。
「投資初心者にとって高配当株投資はシンプルでわかりやすい。配当金は株価の値動きにかかわらず、株を保有していれば確実に受け取れるので、大きな値上がりを狙う成長株より、安定してもらえる配当金を重視したほうが着実な資産形成につながります」
配当は企業の純利益が源泉となるため、減益予想は決してプラスではないが、「前期はたまたま追い風が吹き、今期はそれが剥落しただけで本業がしっかりしていればさほど心配はない」(配当太郎さん)という。
かんちさんは「日本の企業には配当余力がまだあるので、あと数年は増配が継続するのではないか」としたうえで、今後も増配が期待できる条件を挙げる。
「業績が悪化しても減配せずに増配を目指す『累進配当』のほか、純利益だけでなく、株主資本やこれまでに蓄積した利益剰余金を加えた『DOE(株主資本配当率)』を目標に採用している企業は、より安定的な株主還元が期待できます」