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【注目トピックス 日本株】エスペック:環境試験器のグローバルトップメーカー、先端分野の試験需要を追い風に成長加速見据える

*09:53JST エスペック:環境試験器のグローバルトップメーカー、先端分野の試験需要を追い風に成長加速見据える
エスペック<6859>は、環境試験器の世界トップメーカーである。環境試験器とは、製品や部品が温度・湿度・圧力・振動などの環境下でどのような影響を受けるかを評価する装置であり、電子部品や自動車、半導体、医薬品など多岐にわたる産業に利用されている。スマホや家電、自動車など暮らしを豊かにする多くの製品は、消費者の手に届く前に「環境試験」という厳しい試験をパスしている。極寒の雪山でもスマホが使用でき、どんな悪天候でも自動車が安全に走行できるのは、同社が製造・販売している環境試験器を用いて多様な気象環境による影響をあらかじめ分析・評価し、開発を重ねている背景がある。同社の環境試験器はメーカー各社の新技術・新製品開発に不可欠であり、先端技術の実用化を支えている。

セグメントは、環境試験器を中心とした装置事業を主軸に、受託試験・アフターサービスを提供するサービス事業、環境保全や植物育成装置を手がけるその他事業を展開している。2024年度(2025年3月期)における売上構成比は、装置事業が約85%、サービス事業が約12%、その他事業が約3%であり、環境試験器を核とした事業ポートフォリオを構築している。

同社の最大の強みは、国内環境試験器市場で60%以上、世界市場でも30%以上(いずれも同社推定)のシェアを有する点にあり、グローバルな供給体制を確立していることである。同社の国内外の売上高比率は、2025年3月期で国内48.1%、海外51.9%。国内で初めて環境試験器を開発したパイオニアとして、早期に国内外でブランドを確立し、長年にわたりトップシェアを維持してきた実績があるため、国内には同社規模の競合は存在しない。さらに、顧客の多様なニーズに応える高品質な製品群を開発する技術力に加え、多品種少量生産を可能にする柔軟な生産体制を備えている点も競争力の源泉となっている。製品の提供にとどまらず、受託試験やテクニカルサポート、アフターサービスまでを包括したトータルソリューションを提供できる体制を整えていることも、顧客から高く評価されている。グローバル展開においても、日本・米国・中国に主力工場を有しており、供給網の国際分散が進んでいる。また、50ヵ国・地域におよぶ海外ネットワークを通じて、各国の市場ニーズに対応した製品・サービスを機動的に提供している。半世紀以上に渡り、環境試験器のトップブランドとして業界をリードしているが、2013年、2020年には「世界シェアと利益の両立」や「技術の独自性」が評価され、経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」を連続受賞している。

2025年3月期の売上高は67,288百万円(前期比8.3%増)、営業利益が7,526百万円(同14.3%増)と、売上高は3期連続、営業利益は2期連続で過去最高を更新。中期経営計画Stage3「PROGRESSIVE PLAN 2025」の目標を1年前倒して達成した。売上高については、日本・北米を中心に東南アジア・韓国・台湾が増加、中国は前期並み、欧州は減少した。他方、営業利益は販管費が増加したが、主に装置事業・サービス事業の増収、装置事業の原価率改善により増益となった。主力の装置事業はエナジーデバイス装置におけるEVバッテリー向け一括案件の投資減少や、半導体関連装置におけるメモリ関連の投資抑制といった影響を受け、一部の分野では売上が減少したものの、環境試験器では国内において汎用性の高い標準製品およびカスタム製品の販売が伸長したことにより、装置事業全体としては売上高が増加となった。サービス事業では予防保全サービス・修理サービスの堅調な推移や、受託試験サービスにおけるEVバッテリー向け試験設備増強の効果が寄与して増収増益を確保した。その他事業も植物研究用装置や植物工場関連の大型案件が寄与して大幅増益となった。

2026年3月期は、売上高68,000百万円(前期比1.1%増)、営業利益8,500百万円(同12.9%増)を見込む。受注高は、EV・バッテリー向け投資(主に生産用途)が減少すると想定する一方で、AI半導体、自動運転、衛星通信市場の需要を獲得して高水準を維持する方針である。また、製品リードタイムの短縮による受注残高の消化、原価改善・コストダウンにより収益性を向上し、過去最高業績の更新を目指すようだ。中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」の初年度であるが、成長投資と株主還元を実行する。そのほか、米国の関税については、同社は米国に子会社があり現地生産比率は80%以上を占めているため、日本からの輸出は連結売上高の数%程度、また、米国・中国間の貿易もほとんど無いことから直接的な影響は軽微とみている。

市場環境としては、世界経済の先行きは不透明であるが、先端技術開発投資は継続するとみている。地域別にみると、日本ではAI半導体、自動運転関連の投資が堅調に推移し、北米では衛星通信、AI半導体関連の投資に期待。中国では自動車関連が低迷するが、半導体関連は期待しているようだ。ただ、総合的に、脱炭素・自動化といった構造変化の加速により、信頼性評価のニーズも高度化しており、同社の提供する製品・サービスへの期待は高まっている。

同社は中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」を開示しているが、質の向上と利益成長により「筋肉質な企業」となることで持続的な企業価値向上を目指す。10年先を見据えた3年間として、まずは2027年3月期に売上高700億円、営業利益105億円、営業利益率15%、ROE12%以上、とさらなる成長への基盤を作ることを目標としている。先端技術の実用化に向けて試験需要の拡大を見込んでおり、AI半導体、自動運転、衛星通信分野をターゲット市場とする。特に新しい試験ニーズを獲得するために研究開発投費を拡大、製品ラインアップ拡充に注力していく。また、受託試験サービスの拡大やデジタル技術の活用によるサービス品質の向上も進められており、非装置型収益の拡大も視野に入っている。EV・バッテリー向け投資の減速を他分野でカバーし、商品価値の向上およびモノづくりの高効率化により、特に装置事業の環境試験器の売上総利益率を向上させる。グローバル戦略においてはグループの総合力を活かし各エリアにて競争優位性を確立する予定である。

株主還元については、継続性と配当性向を勘案して利益還元を決定することを基本としており、中計の3年間累計で総還元性向を50%以上とし減配は行わないという新たな方針を掲げている。また、連結配当性向を40%以上とし、自己株式取得を機動的に行うようだ。直近株価は堅調に推移しているが、いまだPER10倍、配当利回り3.7%程度とバリュエーション面での過熱感は乏しい。総じて、世の中に欠かせない環境試験器の提供を行うグローバルニッチトップの地位を確立している国内企業として投資家として応援しがいのある企業であり、今後の成長にもかなり期待しておきたい。

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