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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】ゼンムテック Research Memo(2):独自の秘密分散技術を開発、安心・安全なデータセキュリティを提供

*12:42JST ゼンムテック Research Memo(2):独自の秘密分散技術を開発、安心・安全なデータセキュリティを提供
■会社概要

1. 会社概要
ZenmuTech<338A>は、2014年3月に前 代表取締役社長CEOの田口善一(たぐちよしかず)氏によって、(株)シンクライアント・ソリューション総合研究所として設立された。「データの保護、利活用を追求する」をミッションとして掲げ、情報セキュリティ分野で独自のソリューションを提供している。社会全体でDXが進展し、AIや機械学習の活用が広がる一方で、サイバー攻撃の高度化や情報漏洩リスクは増大している。このような背景において、企業や組織はデータを安全に守りつつ、円滑に利活用することが求められている。同社は、安心・安全なデータセキュリティを社会に提供するため、自社開発した秘密分散技術「ZENMU-AONT」を活用した秘密分散ソリューション「ZENMUシリーズ」を展開し、さらに産総研により開発された理論とZENMU-AONT開発のノウハウを生かした「秘密計算ソリューション」の開発を進めている。2025年3月には東証グロース市場に上場し、成長ステージを次の段階へと進めた。

秘密分散ソリューションでは、PC向け情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive(ZVD)」及び秘密分散技術を外部製品に組み込むための秘密分散ソフトウェア開発キット「ZENMU Engine」の2つの主要ソリューションを展開している。ZVDは、テレワークやBYOD※環境における情報漏洩リスクを低減し、サブスクリプションモデルを中心に企業の利用が広がっている。ZENMU Engineは同社がOEM提供を行うことでデジタルウォレットや防犯・監視カメラ等にも活用されている。また、秘密計算ソリューション「QueryAhead」は、データを秘匿化したまま分析・活用できる仕組みを提供し、AIや機械学習分野での利用拡大が期待されている。

※ BYOD:Bring Your Own Deviceの略。自宅などで、従業員自身が保有しているデバイス(パソコン、携帯など)を使って業務を行う環境のこと。

2. 沿革
同社は、シンクライアント※1関連ビジネスから創業し、PC向けセキュリティの知見を蓄積した。その後、中核技術となる「秘密分散」技術に着目し、2015年にPC向け情報漏洩対策ソリューション「PASERI for PC(現 ZENMU for PC(ZPC))」のサービス提供を開始した。続いて、2018年に現在のZENMU-AONT方式を採用したZENMU Engine、2019年にZVD、2021年にQueryAhead、さらに、ZVDの利便性を高めた「ZENMU Virtual Drive Enterprise Edition(ZEE)」のサービス提供を開始した。2023年には、(株)AIST Solutions※2から、同社の技術力と、データ保護や利活用といった社会課題への貢献に取り組み姿勢が評価され「AlSolスタートアップ」として認定された。2025年には、大規模な自然災害や広域災害時にもZVDを継続して使えるよう「ZENMU Virtual Drive ディザスタリカバリ オプション」のサービスやVDI※3との共存モデル「ZENMU Virtual Drive Limited Edition(ZLE)」の提供も開始した。

※1 シンクライアント:企業などの情報システムにおいて、ユーザーが使うPC等の端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバー側に集中させることでソフトウェアやデータなどの資源を集中管理するシステム構成のこと。
※2 AIST Solutions:産総研が100%出資で設立した法人。産総研の技術資産と研究資源を活用し、積極的なマーケティング活動を通じた、オープンイノベーションの強化、エコシステムの構築、新規事業の創出を目指している。
※3 VDI:Virtual Desktop Infrastructure(仮想デスクトップ基盤)の略称。利用者はPCからサーバー上のOSやアプリケーションに接続し、デスクトップ画面を呼び出して操作できる。

独自開発した秘密分散技術・秘密計算技術に優位性あり

3. 技術基盤
(1) ZENMU-AONT
同社が独自開発したZENMU-AONTは、「データ自体を無意味なものとして扱う」という新しい発想に基づくセキュリティ技術である。データを暗号化したうえで、意味を持たない複数の分散片に変換し、分散管理することで、それぞれの分散片単体では元のデータを復元・解析できない仕組み(データの無意味化)をより強固なセキュリティかつ高速処理可能なアルゴリズムで実現した。

従来の一般的な暗号化技術では、一旦、暗号鍵やパスワードが流出すると、情報漏洩につながるリスクがあった。さらに、パスワードの増加による管理負担や使い回しによるリスクも懸念されていた。これに対し、ZENMU-AONTは、暗号鍵やパスワードに依存しないため、管理負担や漏洩リスクを排除することができる。さらに、分散片は32バイトから設定可能であり、ネットワークやストレージへの負荷を避け、高速処理を可能とした。

また、「ZENMU-AONT」による分散片が漏洩しても、個人情報保護委員会※が規定する「情報漏洩」には該当しないと同社では判断している。この技術は、2018年に産総研の監修のもと、「十分な安全性と実効性を備えた方式である」との結論を示す安全性自己評価書を作成し、同研究所との共著論文として査読付きの国際学会でも発表した。

※ 個人情報保護委員会は、内閣府の外局で、個人情報の適正な取扱いを確保し、個人の権利・利益を保護する独立機関。

ZENMU-AONTに競合する技術は、一般的な暗号化のほか、秘密分散技術の「しきい値分散方式」がある。これは、あらかじめ定めた任意の数(しきい値)の分散片を揃えることで元データを復元できる仕組みである。一部の分散片が欠けても復元可能なため、重要データの事業継続計画や災害復旧に適している。ただし、分散片のサイズは、元データとほぼ同じであるため、3分散すると総データ量は約3倍に増加し、保存・転送・処理時間の負荷が大きく、PCやモバイル端末には不向きという課題がある。ZENMU-AONTは、こうした課題を解消できるため優位性があると言える。

AONT方式への参入は限定的で、実用化したのはグローバルでも同社以外にないとしている。現在、秘密分散技術に知見を持つ大手企業の関心は秘密計算に移りつつあるが、同社のZENMU Engineは経済合理性が高いため、今後は同商品の利用拡大が期待されている。

(2) QueryAhead
秘密計算技術とは、データを暗号化または秘匿化したまま計算処理を行う技術であり、企業間・組織間におけるデータ共有や分析をセキュアに実現することを目的としている。同社は産総研により開発された理論と、ZENMU-AONT開発のノウハウを生かした秘密計算ソリューション「QueryAhead」を開発した。

さらに、同研究所が開発した処理速度に優れた新技術をQueryAheadに実装するとともに、ZENMU Engineや各種ソリューションの開発経験から暗号技術の知識がなくてもシステム構築できる仕組みを実現した。これにより、秘密計算の実用化における課題であった「低い処理速度」と「複雑な設計」による導入障壁を大幅に緩和した。

AIや機械学習の精度向上には膨大なデータの学習が必要となるが、従来は各企業がデータを共有する際、機密情報の取得・提供が大きな障壁となっていた。また、複数企業から大量の機密データや個人情報を1ヶ所に集約することは大きなリスクを伴っていた。同社の秘密計算技術により、機密データを秘匿したまま相互利用できるため、安全なデータ連携を通じてイノベーションを促進し、秘密計算アウトソーシングによる効率的な分析も可能となる。なお、同社はQueryAheadの一部に産総研が開発したソースコードを利用しており、利用許諾を得ている(契約期限は2091年末)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)

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