*11:06JST 日本金銭機械:グローバル展開と新領域投資で描く持続的成長
日本金銭機械<6418>は、貨幣処理機器の専業メーカーとして世界的に高いシェアを有し、カジノや遊技場向けの紙幣識別機や還流ユニットをはじめ、セルフレジや駐車場精算機など商業施設向けの製品を展開している。主力はグローバルゲーミング事業であり、北米を中心にカジノ市場で存在感を発揮している。加えて、海外コマーシャル市場や国内コマーシャル市場にも進出し、貨幣識別・搬送技術を応用した製品を提供している。遊技場向機器事業も国内で一定の地位を築いており、同社は多角的な事業ポートフォリオを有することが特徴である。地域別では海外売上高比率が約8割に達し、収益のグローバル分散が進んでいる。
同社の強みは、第一に厳格な規制下にある北米カジノ市場で長年築いてきた信頼と高シェアである。ゲーミングライセンスを多数取得し、30年以上にわたり事業を継続していることで、安定的な収益基盤を確保している。第二に、貨幣処理に特化したコア技術の蓄積と応用力であり、紙幣識別から搬送・還流システムまで一貫した技術を提供できる点は模倣が難しい。第三に、グローバル拠点を通じたカスタマイズ対応力であり、北米・中南米・欧州・アジアに拠点を展開し、現地の顧客ニーズに即した製品提案が可能となっている。第四に、安定収益を生む定期保守・サービス収入の存在であり、機器のライフサイクルを通じて継続的な収益を確保できる体制を構築している。
2026年3月期第1四半期の業績は、売上高7,612百万円(前年同期比24.7%減)、営業利益441百万円(同77.0%減)となった。新紙幣改刷需要が一巡したことに伴う反動減が大きく、国内コマーシャルや遊技場向機器で販売が減少した。一方で、北米のゲーミング市場ではカジノ向け紙幣識別機ユニットの販売が堅調に推移し、収益を下支えした。営業利益については、新製品開発や新規市場開拓に向けた研究開発投資が増加したことも影響している。ただし、この減益は一時的要因が大きく、中期的には改刷需要反動の収束と新製品寄与による改善が見込まれる。通期は売上高で前期比18.0%減の31,000百万円、営業利益で同71.5%減の1,400百万円が計画されている。
今後の成長見通しとしては、中期経営計画「JCM Global Vision 2032」を推進している。同計画では、既存のゲーミング・コマーシャル事業の拡大に加え、医療領域など新分野への進出を掲げている。特に海外コマーシャル市場は戦略的に注力しており、北米や中南米に拠点を整備し、流通や交通分野の需要を取り込む方針である。さらに、AIやロボテックを活用した自動化ソリューションの開発を進めており、既存技術を応用して新たな市場を開拓する取り組みが進展している。研究開発への積極投資やM&Aによる体制強化も視野に入れており、成長ドライバーを多様化させている点は注目される。
株主還元については、連結配当性向30%を基本とした業績連動型を採用している。2025年3月期は1株当たり創立70周年記念配10円を含む50円を実施したが、2026年3月期は40円を予定している。自己資本比率は高水準を維持しており、財務基盤の安定性は十分である。配当方針は一貫しており、今後も業績拡大に応じた還元強化の余地があるとみられる。
総じて、同社は貨幣処理機器における圧倒的な技術力と北米市場での信頼性を背景に、安定収益と新領域投資を両立させている。改刷需要の反動減は一時的であり、中長期的にはゲーミング分野の堅調な成長とコマーシャル分野の拡大、新市場開拓によって持続的な成長が期待される。今後の業績推移と戦略遂行に注目していきたい。
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