*11:36JST 株式会社アーバネットコーポレーション×著名投資家DAIBOUCHOU氏対談動画文字起こし(6)
アーバネットコーポレーション<3242>
●DAIBOUCHOU
では、もう竣工前に販売契約をしているっていうことですかね。
■アーバネットコーポレーション 服部様
竣工前というよりも、着工のタイミングでほとんどの物件が契約済みになります。
当社には長年にわたり取引のある優良な法人投資家やファンドのお客様が多く、当社の物件を高く評価してくださっているため、「ぜひ早く売ってほしい」というお声を多くいただきます。
そのため、着工段階で既に販売契約を締結するケースが大半です。確かに、竣工後に入居者を付けてから販売すれば、もう少し高く売却できる可能性はあります。しかし、わずかな利益の上積みのために期間リスクを取ることは避けたいと考えています。不動産市況は常に変動しますので、リスクを抑えて確実に利益を確保する早期売却型のビジネスモデルを当社は貫いています。
●DAIBOUCHOU
なるほど。竣工前の段階でほとんど契約が決まっているということは、売れ残りリスクがほぼないということですね。非常に堅実なリスク管理だと思います。
では次に、最近は立地の良い開発用地をめぐって競争が激化していると言われますが、土地仕入れの工夫について教えていただけますでしょうか。
■アーバネットコーポレーション 服部様
そうですね。当社では、大手の仲介会社や中小の不動産会社からの情報提供を受けるほか、社員が直接地主のもとを訪ねて交渉するという形でも土地の仕入れを行っています。
都心部には、まだまだ借地権付きの土地や、古い木造住宅が立ち並ぶエリアが多く残っています。そこでは、地主が「いずれは建て替えたい」と考えている一方で、借地人は「(借地権を譲渡する際に地主に支払う)譲渡承諾料が高くて動けない」というケースが多く、土地の有効活用が進んでいない状況です。
そうした場所に当社の営業スタッフが出向き、「この土地をマンションに再開発すると、こういう形になります」という具体的なプランを提示します。地主には現金や新築建物の一部を等価交換で提供し、借地人にも新たな住戸や条件を提示することで、両者にとって納得のいく形で再開発を進めていきます。こうして時間をかけて土地全体をマンション用地として整備していくのが当社の特徴です。
現在、デベロッパーにとって最も大きな課題は「土地の仕入れが難しいこと」です。多くの会社が仕入れに苦戦している中で、当社が比較的順調に進められているのは、こうした地道で丁寧な提案活動と、社員育成の成果によるものです。当社では、新卒社員を一から育成しており、最初の2〜3年はなかなか土地を買えないのが普通です。しかし、3年ほど経つと次第に成果を上げるようになり、現在は若手社員が着実に実績を積んでいます。また、他社で経験を積んだ優秀な中途社員も加わり、若手と協力しながらチームとして動いている点も強みです。社内の雰囲気も良く、風通しの良い組織文化の中で、協調的に土地の仕入れを進めています。
さらに、当社は自社内に設計部門を擁しているため、設計担当者と仕入れ担当者が連携し、現地の土地条件を踏まえて迅速にプラン図を作成することができます。必要に応じて設計スタッフが自ら図面を引き、仕入れ担当者が地主に具体的な再開発提案を行う体制が整っています。このように意思決定が早く、現場と本社が一体となって動けるのが当社の強みです。
また、昨年グループ入りした子会社ケーナインとの情報共有・協業も活発化しており、戸建・アパート開発など異なる分野のノウハウも共有されています。これにより、仕入れの幅が広がり、シナジー効果も生まれています。
このような仕組みのもと、当社では他社に負けないスピードと精度で土地を確保できており、引き続き「良質な立地をいかに確保するか」を最優先課題として、仕入れ体制をさらに強化していきたいと考えています。
●DAIBOUCHOU
なるほど。土地の仕入れ力が奏功して、土地の転売事業でも業績が伸びている印象を受けますが、そうした転売による高収益という側面もあるのでしょうか。
■アーバネットコーポレーション 服部様
転売は一部で行っていますが、あくまで例外的な取り組みにすぎません。当社の基本方針は、土地を取得したら必ず建物を建て、土地と建物を一棟で販売することです。したがって、土地だけでの転売は全体から見ればごく限られたケースとなります。
●DAIBOUCHOU
なるほど。よく分かりました。ありがとうございます。
では次に、最近よく話題になる建築費の高騰について伺います。建築費を抑えるための工夫があればお聞かせください。
■アーバネットコーポレーション 服部様
そうですね。先ほども少し触れましたが、現在はゼネコンの現場監督や職人の数が減少しており、人手不足が深刻化しています。さらに、昨年4月から導入された「4週8閉所制(週休2日制)」の影響で、建設現場の稼働日数が減少し、工期が大幅に延びているという現実もあります。その結果、建築費の上昇に加えて、ゼネコン各社の施工キャパシティが減少しているのです。
このため現在、多くのデベロッパーが「せっかく良い土地を仕入れても、施工を請け負ってくれるゼネコンが見つからない」という状況に直面しています。最終的には、土地を転売せざるを得ないケースも増えており、業界全体で深刻な問題になっています。そうした中で、当社はゼネコンとの長年の信頼関係とパートナーシップを大切にしています。
私はもともと設計畑の出身で、長年ゼネコンの方々と現場で協働してきました。その経験から、発注者の立場を振りかざすことなく、「同じ目線で協力し合う」という姿勢を貫いてきました。その結果、現在のようにゼネコンが新規案件を受けにくい時期でも、当社に対しては「アーバネットさんの案件ならぜひ受けたい」と前向きに引き受けてくださるパートナーが多い状況です。おかげさまで、施工会社が見つからずに土地を手放すようなケースは一切ありません。まさに「お互いに厳しい時期こそ支え合う」という精神が、今日の安定した事業基盤につながっていると感じています。
また、建築費を抑える工夫として、当社では企画段階から効率的な体制を整えています。一般的には、企画図面を作成した後に実施設計・確認申請を経て、最終図面が完成してから見積りを依頼しますが、当社の場合は少し異なります。長年にわたって多くの類似案件を手がけてきたため、ゼネコン各社も当社の企画設計に精通しており、企画図面の段階で見積りを出すことが可能なのです。このため、土地を取得した段階で早期にゼネコンを決定することが多く、着工の半年から10か月前に発注先を決めることも珍しくありません。施工会社としても、あらかじめ工事時期がわかることで監督や職人の配置計画を立てやすくなります。また、早期発注によって下請け業者や資材を先行確保できる点も大きな利点です。建築資材の価格が上昇し続ける中、早めに抑えることでコストを安定化させることができるわけです。
このような取り組みによって、当社の物件は比較的安定した価格で高品質な施工を実現できていると考えています。最終的には、土地代と建築コストの抑制が投資家の利回り向上につながります。当社の事業は、賃料想定と利回りによって評価されるビジネスモデルですので、土地と建物をいかに効率よく、適正価格で作り上げるかが極めて重要だと考えています。
株式会社アーバネットコーポレーション×著名投資家DAIBOUCHOU氏対談動画文字起こし(7)に続く
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