企業向けに開発されたAIエージェント「マナス」の特徴とは(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。メタ社が巨額買収した中国のAIエージェント「マナス」の機能と、米中のAI開発競争についてレポートする。
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メタ・プラットフォームズ(メタ)は2025年12月29日、中国由来の企業である「北京蝴蝶効應文化傳媒有限公司(バタフライエフェクト)」から AIエージェント「Manus(マナス)」の事業部門を買収すると発表した。詳細な情報は見当たらないが、米中マスコミ報道から推測すると、企業価値は20億ドルを超え、買収金額は30億~50億ドルに達するとみられる。メタにとってWhatsApp、Scale AIに次ぐ大型案件となったようだ。
マナスは企業向けに開発されたAIエージェントである。デジタル従業員として、人事管理、金融業務、データー分析、EC業務全般のサプライチェーン管理、貿易決済業務、マーケッティング、ソフトウエア開発、IT業務などに使用される。
マナスとChatGPTやGeminiなどとの決定的な違いは、自身ではトレーニングを必要とするモデルではないという点だ。ChatGPTやGeminiなどを“大脳”とすれば、マナスは大脳を第三者に依存するシステムである。マナスは複数の仮想マシン(ソフトウエア上で再現されたコンピュータ)をサンドボックス(隔離された仮想環境)に形成することで、マルチエージェントアーキテクチャ(複数のAIエージェントが連携して複雑なタスクを効率的に処理するシステム)を作り上げている。ちなみに現在は、アンソロピックのクロード、アリババグループの千問などを頭脳として利用しており、洗練された“手足”が製品価値のコアとなる。
開発者は江西省吉安市出身の肖弘氏で1993年生まれ。30代前半の若いエンジニア・経営者だ。2015年に華中科技大学ソフトウエアエンジニアリング科を卒業すると微信上で作動するツールなどを開発する企業・武漢鶯科技を設立、2021年にはテンセントなどからストラクチャードファイナンスによる資金調達に成功している。その後、2022年にはバタフライエフェクトを設立。そこで「Monica(モニカ)」というChatGPT4、GeminiからフィードバックをもらうAIブラウザを開発、その成果がマナスの開発に繋がった。
バタフライエフェクトは2025年3月、マナスを発表。中国版ではアリババグループの通義千問と提携するとしており、国内事業にも注力するつもりであったようだが、6月にはグローバル本社をシンガポールに移すとともに、国内でのサービスを停止、海外展開に活路を見出す戦略に転換した。
こうした一連の事業展開の延長線上にあるのがメタによる買収だ。マスコミ報道によれば、肖弘氏はメタの経営陣の一角を兼任するようで、マナスの従業員約100人はそのまま、メタのスーパーインテリジェンスラボのシンガポールオフィスに移る。ただ、事業運営の独立性は維持されるそうだ。
