中国の経済政策が日本の不動産価格にも影響を及ぼす可能性(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《中国が発表した2026年の経済運営方針を読み解く 前年と変わった全体基調「穏中求進、提質増効」の意味 “突出した矛盾”と指摘された問題点とは》を踏まえて、日中関係が悪化するなか、中国政府が国力強化につなげるべく採択しうる経済政策について考察する。
* * *
中国で開催された2026年の経済運営方針を定める中央経済工作会議(定調)の“経済問題の認識”に関する部分で、“供給過剰・需要不足”が“突出した矛盾”であると指摘されている。この矛盾を解消し、かつ来年も5%前後の成長を達成するためには、これまで以上に強力な需要拡大政策が必要だ。
そうなると、中国政府が経済政策の面で、日中関係の悪化を利用する可能性もあるだろう。その場合、どのような方法があるだろうか。
中国政府は11月14日、自国民に対して日本への渡航を自粛する要請を出したが、これによって、日本旅行を取りやめた人々を国内旅行・レジャー消費などに振り向ける余地が生じている。また、先端技術の国産化を進めているが、日本からの輸入の多い製品・設備に絞った国内代替、輸入削減政策を率先させることができる。不動産不況対策としては、日本への不動産投資に流れていた資金を本土不動産市場に引き戻すことができるかもしれない。
まず、日本に流れていた旅行需要の還流についてだが、第十五次五か年計画(2026~2030年)建議において「旅行強国建設の推進」が明記されている。国内の文化・旅行資源、関連サービスの質を高めるとともに、免税店政策の改善など海外消費需要の取り込みを目指すなどとしている。
次に、日本から輸入されるハイテク技術製品・設備の国産化についてだが、これは国家が進める大きな産業政策と合致する。「国家が発展を支持する重要技術設備・製品目録(2025年版)」が2025年3月に交付されているが、日本が得意とする半導体関連製品、設備などを含め、広範なハイテク製品、設備が網羅されている。国内ハイテク装置産業の購入を支援することを趣旨とする輸入税徴収政策などが実施されている。日本が得意とする分野に対して政策強度を上げることが可能だ。
