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田代尚機のチャイナ・リサーチ
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中国が発表した2026年の経済運営方針を読み解く 前年と変わった全体基調「穏中求進、提質増効」の意味 “突出した矛盾”と指摘された問題点とは

中央経済工作会議で発表された2026年の中国経済の方向性とは(習近平・主席。Getty Images)

中央経済工作会議で発表された2026年の中国経済の方向性とは(習近平・主席。Getty Images)

 中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は、中国で12月10日、11日に開催された中央経済工作会議(定調)で定められた2026年の経済運営方針を読み解いていく。

 * * *
 中国で、2025年の経済情勢を総括、分析し、2026年の経済運営方針を定める中央経済工作会議(定調)が12月10日、11日の日程で開催された。経済運営方針について昨年と比べ、どのような変化があったのか見てみよう。

 まず、マクロ政策の全体的な基調だが、前年は“穏中求進、以進促穏”を堅持するとあったが、今回は“穏中求進、提質増効”と変化した。共通する前半部分の“穏中求進”だが、「短期的には安定を保ちながら長期的には発展を進める、リスクをしっかりとコントロールする一方で改革・イノベーションを着実に進めるなど、成長と安定を上手く均衡させる」といった含意であろう。長期的に堅持すべき目標であり、この部分に変わりはない。

 変化のあった後半部分だが、昨年は“以進促穏”としており、「新しいことを意欲的に取り組むことで経済社会の安定した発展を促す」であった。成長に重心が置かれていたが、今年の“提質増効”は「経済発展の質を引き上げ、効率(生産性)を高める」とあり、成長のより具体的な内容に言及している。

 2025年における成長率目標であった5%前後については、第3四半期累計で5.2%に達していることから、達成はほぼ確実とみられるが、その成長の実態について分析してみると課題があった。その反省と来年に向けた改善のポイントが “提質増効(経済発展の質を引き上げ、効率(生産性)を高める)”なのだろう。

需要が弱い中で生産(供給)が増えている問題点

 今年の定調“経済問題の認識”に関する部分で、問題点が明確に示されている。“供強需弱”つまり、供給過剰・需要不足を指摘している。それが“突出した矛盾”となっていると強調している。

 需要が弱い中で生産(供給)が増えている。具体例としては、新エネルギー自動車、太陽光パネル、風力発電設備などの産業が挙げられよう。また、トランプ政権による相互関税政策の影響もあって輸出環境が悪化したにもかかわらず、生産量を拡大し量産効果を引き出し価格を下げることで輸出を促進するといったことを、多くの輸出企業が行っている。

 消費拡大政策の一環として、自動車、家電、デジタル製品から住宅に至るまで、広範な消費財において買い替え需要促進政策が実施されている。同時に、生産設備、船舶、貨物車などにおいて旧式設備の更新を促す政策が実施されている。しかし、これらの政策は一時的な需要の先食いを引き起こしているだけで、時間軸を少し長く取れば、需要の増加分は大きくない。つまり、需要が十分増えない中で、供給だけが大きく増加したことになる。

 1-11月累計の統計を確認すると、鉱工業生産は6.0%増であったのに対して、小売売上高は4.0%増、固定資産投資に至っては2.6%減。一方、輸出(人民元ベース)は6.2%増で、輸入は0.2%増。貿易収支は7兆7081億元の黒字であった。昨年の貿易黒字額は7兆652億元で過去最高を記録したが、今年は11月累計で、昨年の黒字額を既に6429億元上回っている。このバランスの悪い経済発展状況を是正する必要があると今年の定調は強調している。

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