閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
田代尚機のチャイナ・リサーチ
有料会員限定鍵アイコン
有料会員限定

日中両国の「貿易依存度」を最新データから読み解く 中国の輸出入における日本の存在感が薄れる一方で、日本の中国依存は依然として高水準

直近10年での中国の貿易構造の大きな変化とは(習近平・主席。Getty Images)

直近10年での中国の貿易構造の大きな変化とは(習近平・主席。Getty Images)

 中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。高市早苗・首相の「存立危機事態」発言以降、あらためて“チャイナリスク”がクローズアップされているが、日中両国の関係が悪化した場合、それぞれの経済へのダメージはどれほどのものか。直近の日中両国の貿易構造を踏まえて、レポートする。

 * * *
 1~10月における中国の貿易統計(人民元ベース)をみると、日本の輸出順位は4位で全体の4%に過ぎない。1位は米国、2位は香港、3位はベトナムといった順位である。香港の順位が高いが、香港は中継地だ。2024年における香港の中継貿易統計を見ると、最大の再輸出先は中国で59%を占めるが、2位は米国、以下ベトナム、インド、台湾、UAEと続き、日本は7番目である。

 別の切り口でみると、EUへの輸出比率は15%、ASEANは18%、一帯一路国家地域は50%だ。中国にとって日本は重要な輸出先の一つではあるが、米国、EU、ASEAN、あるいは一帯一路国家などと比べるとその重要性は高くなく、日本への輸出ルートを失ったとしても他国への輸出増でカバーできるだろう。

 10年前となる2015年の統計と比較すると、日本のシェアは6%から4%に低下している。米国も同様(18%から11%)だが、EUはほぼ横ばい(16%から15%)で、ASEANは大きく上昇している(12%から18%)。

 習近平・国家主席が一帯一路といった国際経済協力体制の構築を初めて提唱したのは2013年9月であった。中国一帯一路網によれば、現在の加盟国はアジア41カ国、アフリカ52カ国、欧州27カ国、北米13カ国、南米11カ国、太平洋諸島国家12カ国としている。中国は明確な戦略に基づき、積極的な“仲間作り外交”によって、経済体制、経済規模、発展状況も異なる国々を経済的利益の一点で緩やかに結び付け、新たな市場を獲得している。

10年間で中国の貿易構造は大きくシフト

 輸入についても同様のデータを調べてみると、2025年1~10月における日本の輸入順位は台湾(9%)、韓国(6%)についで3位で全体の6%を占める。2015年も日本は3位であったがシェアは9%あった。ちなみに、この時代の1位は韓国で10%、2位は台湾で9%であった。

 貿易構造をみると、2015年の一般貿易は54%であったが、2025年(1~10月)には63%にまで上昇している。一方、iPhoneやブランドアパレルなどの製造に代表される来料加工組立貿易(海外企業が無償で原材料、部品などを提供し、中国企業がそれらを加工して加工賃を受け取る形態)は4%から3%、その他一定条件の海外向けOEM、ODM製品製造の進料加工貿易(中国企業が自らの資金で原材料、部品などを輸入し、それらを加工して輸出する形態)は27%から16%に低下している。2015年と2024年における輸出依存度(名目GDPに対する比率)をみると、20%から19%へ、輸入依存度は15%から14%へとわずかではあるが低下している。

 これらのデータをまとめて整理すると、この10年間で中国は、内需のウエイトを若干高めると同時に、先進国向けに加工貿易を行うといった貿易構造をグローバルに一般貿易を行うといった貿易構造へとシフトをさらに深めている。そうした中で、中国における日本の経済的な重要性は低下し続けている。

次のページ:中国からASEAN市場への輸出攻勢
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。