高市早苗首相の「存立危機事態」発言は日本経済にどのような影響をもたらすのか(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《日中両国の「貿易依存度」を最新データから読み解く 中国の輸出入における日本の存在感が薄れる一方で、日本の中国依存は依然として高水準》を踏まえて、日本経済が抱える対中国の構造的リスクについて解説する。
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名目GDPについて、中国を100とすれば米国は156だが、日本は21に過ぎない(2024年、ドルベース、IMF)。米国経済は金融のウエートが高い。製造業に限れば米国は59、日本は18となる(2023年、ドルベース、国連)。貿易統計でも同様の比較を行うと中国を100とすれば米国の輸出額は58、日本は20(2024年、ドルベース、UNCTAD)。輸入では米国は130、日本は29である。グローバル経済における日中規模の差はこれほどまでに大きい。
国務院新聞弁公室は11月27日、政策に関する定例のブリーフィングを行った。工業情報化部の謝遠生副部長は中央放送テレビ総局記者から「サプライサイド経済構造改革の進展状況」に関する質問を受け、「品種を増やし、品質を向上させ、ブランドを作り出すといった“三品”戦略を展開している」と説明した上で、「コンシューマー商品の品種総額は2億3000万種類に及び、家電、家具、文房具、アパレル繊維など100以上の品目の生産量が世界最大である」などと発言している。こうした商品を日本国内で安く大量に供給することのできない日本は、それらの多くを中国から輸入している。
スマホ、パソコン、ウエアラブル端末、新エネルギー自動車からドローン、人型ロボットといった先端技術製品に至るまで中国の生産力は世界トップクラスである。これから本格的に始まるだろう世界を一変させるAI革命においても、中国は米国と覇権を争っている。日本が突然、こうした産業で国際競争力を獲得し、大量生産できるようになる可能性は低いと言わざるを得ない。この先も、一部のニッチ市場の高級品は別として、日本は様々な製品を中国から大量に輸入して暮らしていかざるを得ないだろう。
