米国債市場に試練(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国による、米国債を中心とした外貨運用の実態についてレポートする。
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米国メディア(ブルームバーグ)は2月9日、関係者(匿名)からヒアリングした非公開情報として「中国の監督管理機関は一部の大型銀行に対して口頭で新たな米国債の買入を制限するとともに、保有額を減らすよう指導した」などと報じた。米国債市場の反応は一時的なもので、その後はむしろ利回りが低下する方向で推移している。為替市場も同様で、17日現在、ドル指数は緩やかな上昇に転じている。
2025年11月における中国の米国債保有残高は6826億ドル。日本、英国に次ぎ、第3位の保有規模である。これだけの額を保有していれば、公開市場を通じて一度に多額の売りを出せば、価格は暴落し、大半の売れ残る米国債は紙くず同然となってしまう。これは国有財産の喪失を意味し、中国側がそのような行動を起こすとは思えない。
それでも、米中関係が更に大きく悪化し、中国が金融戦争を仕掛けるようなことが起きるかもしれない。そうなれば、米国はすぐさま中国のドル資産を凍結するだろう。2022年にロシアがウクライナに侵攻した際に、米国が採った措置が参考になる。中国は大規模な国有財産の喪失といった結果を招いてしまいかねないので、そのような行動を起こすことはないと考えられている。
中国は2022年11月以降、外貨準備として積極的に金を購入している。2025年12月末における金保有量は7415万オンスに達しており、3年2か月の間に重量ベースで18%増やしている。もっとも、金は金利の付かない資産である。4%程度の利回りのある米国債(10年物)は依然として魅力的な金融商品の一つである。直近で外貨準備高に占める金の比率は全体の9.5%に達しており、買い増しにも限界がある。結局、今後も米国債を減らすとしてもその余地は限られるのではないかと結論付けてしまいそうであるが、中国の外貨運用の実態はもっと複雑で、したたかだ。
