*12:46JST 東邦ガス Research Memo(6):中東情勢による供給への影響は軽微な予想。電力設備等への戦略投資を強化
■成長戦略・トピック
1. 中東情勢による影響:現時点で安定供給に支障は生じない見通し
東邦ガス<9533>は原料の中東地域への依存度は低く、現時点で安定供給に支障は生じない見通しである。具体的には、同社のLNG(都市ガスの主原料)調達先はマレーシア、米国、サハリン、豪州、カナダであり、現時点で影響はない。LPG(都市ガス熱量調整用・LPG事業用)調達に関しても、国内元売り事業者等からの調達になるが、日本のLPG輸入における中東依存度は4%程度(2024年度)であり、同様に影響は少ない。ただし原油価格等の市況変動に伴い、LNGやLPG、電力等の調達価格に影響を受ける可能性はある。また、情勢の悪化・長期化が当地域(中部圏)の経済活動を下押しする場合、エネルギー販売量に影響を受ける可能性があるため、今後の動向を注視する必要がある。
2. 中期経営計画(~2028年3月期)で経常利益300億円を目指す
同社は、2028年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を推進しており、初年度の2026年3月期は順調に計画を遂行した。グループビジョンでは、「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」として多様なエネルギーの提供者であることとともに、「エネルギーの枠を超えた、くらし・ビジネスのパートナー」とうたっており、課題解決型の地域創造ビジネス群の深耕と、他分野との連携による事業領域の拡大を目指す。基本戦略としては、経営資源配分の見直しを加速し、事業構造の変革を推進する。コア事業の収益力を強化しつつ、そこで得たキャッシュを戦略事業に積極投資し成長する計画である。
新中期経営計画の利益目標は、連結経常利益で300億円(2028年3月期)である。2025年3月期の経常利益の実力値を250億円と想定し、そこから50億円伸ばす計画である。中期経営計画期間においては様々な費用の上昇(物価、賃金、利払い等)が想定されるなか、コア事業の効率化と収益力強化を継続しつつ、戦略事業(電気、海外、地域を基点とした地域価値創造ビジネス群)の成長による収益向上を目指す。
3. コア事業及び戦略事業の計画と2027年3月期のキャッシュアロケーション
同社のコア事業は、都市ガス事業及びLPG事業であり、安定的なキャッシュ・フローの創出を目指し、サプライチェーンの各段階での取り組みを推進する。2026年3月期は、都市ガス・LPGともに顧客数が増加し、順調に顧客基盤が拡大した。また、先行投資としてスマートメーターの設置に注力しており、短期的にはコスト増となるものの、中期的には検針の効率化などによるメリットが大きい。2027年3月期は投資額を370億円に増やす計画である。
戦略事業として、電気事業、海外事業、地域を基点とした地域価値創造ビジネス群を挙げている。特にガス事業で培った強み(基盤・技術・知見)を存分に生かせる電気事業及び海外事業は次世代の利益成長の原動力として有力である。電気事業は既に売上1,000億円に迫る規模に成長しており、2025年3月期以降は黒字化を達成している。中期経営計画期間には、競争力のある電源の構築、再生可能エネルギー開発の推進、営業ソリューション多様化などに取り組む。海外事業では、これまでに天然ガスや再生可能エネルギーの普及拡大を通じて、各地域の低・脱炭素化に貢献しており、今後は東南アジアや米国での投資を進める。2027年3月期は投資額を500億円に倍増させる計画である。
4. ガスエンジン発電設備の建設を決定
同社の戦略事業として、電力事業の拡大に取り組んできた。自前の大規模電源の開発に関しては、2029年稼働に向けて準備が進んでいる。建設中の知多火力発電所7号機は2029年10月に運転開始予定、8号機は2030年1月に運転開始予定である。また、電力ピーク対応を目的にガスエンジン発電設備の建設が決定した。時間帯や天候、季節に影響される再生可能エネルギーの変動に対応する調整力として機動力の高いガスエンジンが有効であり、電気の安定供給を図ることが可能となる。同社のLNG調達力と、四日市発電所で培ったガスエンジン発電設備の建設・運営の知見を生かすことができる点でアドバンテージがある。出力は10.5万kW、建設予定地は愛知県半田市、2027年4月に建設を開始し、2030年度までに運転を開始する計画である。
5. 政策株式の売却、自己株式取得等の施策を加速
同社は2024年4月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表し、PBR(株価純資産倍率)の向上のために、資産効率の向上や適切な資本構成を目指している。資産効率の向上においては、各事業の収益性を高めるほか、政策保有株式の売却スピードを加速する。具体的には、保有意義の薄れたものを中心に、当面は2024年3月末の残高に対し、評価額ベースで約1/3程度の売却を進める。2026年3月期は100億円(売却益95億円)の売却を順調に実施しているものの、株式市況の影響で評価額が上がっているのが現状である。適切な資本構成としては、自己資本の目安とする水準を4,000億円とし、2028年3月期末の達成を目指している。直近の自己資本は、2025年3月期末で4,483億円、2026年3月末で4,775億円と上昇傾向にあるが、株式市況の好調に伴う保有株式の評価額上昇といった外部要因の影響が大きい。一方で、自己資本の最適化に向けたドライバーとなる自己株式の取得については着実に進めている。2025年3月期に300億円、2026年3月期に300億円、それぞれ自己株式を取得した実績がある。2026年3月期で言えば、配当総額83億円に対して300億円の自己株式取得が行われており、その規模の大きさがわかる。2027年3月期も2026年4月1日〜2026年9月30日を期間とする上限150億円(2026年3月公表)の自己株式の取得が決議されており、総還元性向が高くなることが想定される。高水準の自己株式の取得が中期的に続くと予想されるため、株主にとっては充実した株主還元が期待できる。
■株主還元策
2026年3月期は前期比10.00円増の年90.00円配当。自社株買い300億円と合わせ総還元性向100%超
同社は、経営基盤の強化と安定配当を利益配分に関する基本方針としている。中期経営計画の計画期間(2026年3月期〜2028年3月期)においては、利益成長とともに累進的な増配を計画している。また、自己株式の取得を進め、2028年3月期末の自己資本4,000億円を目安に最適化を図る(2026年3月期末の自己資本は4,775億円)。2026年3月期は、配当金90.00円(前期比10.00円増配、中間45.00円済、期末45.00円)、配当性向26.5%となった。2026年3月期は上期150億円、下期150億円の自己株式の取得を完了し、総還元性向では100%を超えた。2027年3月期は、配当金22.50円(中間11.25円、期末11.25円)、配当性向35.6%を予想する。同社は2026年4月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行ったため、分割前換算で前期と同額の配当となる。また、前述の通り、2027年3月期上期を期間とする上限150億円の自己株式の取得が進められている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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