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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】モリテックスチール:収益構造改革で2030年3月期営業利益18億円へ、PBR1倍なら株価700円超も

*11:47JST モリテックスチール:収益構造改革で2030年3月期営業利益18億円へ、PBR1倍なら株価700円超も
モリテックスチール<5986>の株価は9月1日終値で256円、PBRは0.35倍と1倍を大きく下回る水準で推移している。単純にPBR1倍まで評価が是正された場合の株価は730円となり、足元からは2.8倍の水準となる。また、中期経営計画では2030年3月期にROE8%を目標とするなか、会社側もPBR1倍以上を意識しており、収益構造改革によるROE向上が実現すれば株価の水準訂正余地は大きいと考えられる。

同社は、特殊帯鋼・普通鋼等を取り扱う専門商社ながら、焼入鋼帯・鈑金加工品の製造・販売を行うなどメーカー機能も併せ持つ。商事部門での鋼材販売を主軸としながら、焼入鋼帯や鈑金加工といった製造機能を有し、加えてEV充電器など新規領域への展開を進める。主要顧客は自動車、家電、機械、精密部品関連で、素材供給から部品加工までを一気通貫で手掛けることができる点が特徴である。また、タイ、メキシコ、中国、インドネシア、ベトナムなどに拠点を構え、国内で培った加工技術や顧客対応力を海外へ展開できるグローバルな事業基盤を構築している。

8月7日に発表した2027年3月期第1四半期業績は、売上高11,814百万円(前年同期比2.7%減)と減収ながら、営業利益212百万円(同473.5%増)と利益面では大幅な改善をみせた。商事部門は自動車・家電需要の調整などから減収となったものの、コスト改善により増益を確保。特に鈑金加工品は売上高1,922百万円(同10.8%増)、セグメント利益188百万円(同約9.3倍)となり、歩留まり改善による原価率低下などから収益性が大きく改善したほか、海外事業も好調だった。一方、中期経営計画で成長領域に位置付ける焼入鋼帯は減収減益着地なっており、今後の拡販が焦点となる。

2027年3月期通期では売上高49,000百万円(前期比1.7%増)、営業利益600百万円(同34.9%増)を見込む。第1四半期時点で営業利益は通期計画に対して約35%まで進捗しており、利益面では順調なスタートとなった。また、8月には中間期の売上高24,000百万円、営業利益300百万円を据え置く一方、一部製品の生産終了に伴う取引先からの補償金を営業外収益として計上することから、中間期の経常利益・純利益を上方修正した。

同社が5月に発表した2026年度から2029年度までの4年間を対象とする中期経営計画では、2030年3月期に連結営業利益18億円、ROE8%を目標と掲げた。同社の連結売上高は500億円規模まで拡大した一方、営業利益率は1%未満にとどまっており、会社側も「規模と収益性のギャップ」を重要な経営課題として認識している。2026年3月期の営業利益約4億円から2030年3月期には18億円へ約4倍に引き上げる計画であり、売上規模の拡大以上に、高付加価値品へのシフトや事業ポートフォリオ改革によって収益力を高められるかが中計のポイントとなる。

中計では、成長戦略を4本柱に整理している。第1は焼入鋼帯・ベーナイト・ゼンマイなど高付加価値品目の強化で、これらの売上高・粗利益を4年間で6倍へ拡大する目標を掲げる。既存主要顧客でのシェアアップに加え、地域代理店網の構築などを通じて国内外で新規顧客を開拓する。足元では焼入鋼帯事業の業績はまだ弱いものの、計画通り拡大できれば、商事部門中心で利益率の低い現在の収益構造を変える重要なドライバーとなる。第2の柱は、自動車のICE(内燃機関)依存からの脱却である。同社は鋼材・製品ともに自動車向けが売上高の5割弱、モリテックスチール単体では約7割を占め、その多くがICE関連となっている。会社側では、グローブ加工、精密加工、非鉄加工、絞り加工、板鍛造加工、接合加工の重点6分野へ経営資源を投入する。特に電動化に伴い需要拡大が期待される銅・アルミなど非鉄材料への加工対応を強化し、既存の自動車関連顧客との取引基盤を生かしながら製品ポートフォリオを転換していく。第3の柱となるEV事業では、従来の普通充電器にとどまらず、機械式駐車設備用DC充電器、産業用途向けDC充電器、汎用DC充電器、IoT通信ユニット、次世代ゲートウェイ、設備・充電システム連携、統合プラットフォームへと事業領域を拡大する。単体の充電器販売から、通信・制御を含めたEV充電インフラへビジネスモデルを広げる構想である。中計期間では開発投資を過去3年間比で約2.5倍に引き上げ、2040年を見据えた第3ステージの新事業・新技術開発にもつなげる。第4の柱ではDXを活用して在庫回転日数を圧縮し、運転資本の効率化とキャッシュ創出力の向上を図る。

同社の競争優位性は、「商社×メーカー」の一体運営による柔軟性と技術力の双方を備える点にある。商事部門では特殊帯鋼、ステンレス、表面処理鋼板などを幅広く取り扱い、小ロット・短納期対応や顧客ニーズに応じた在庫・加工提案を強みとする。製造部門の中核である焼入鋼帯では、独自の熱処理技術を用いたベーナイト鋼帯や広幅焼入鋼帯を展開し、クラッチ部品、ゼンマイ、刃物など高い強度や耐久性が求められる用途で採用されている。また、鈑金加工では自動車部品などの金属加工から組立まで一貫して対応する。単なる鋼材販売ではなく、材料選定から加工・製品化まで顧客の製造工程に入り込んだ提案が可能であることが、専門商社だけでも加工メーカーだけでもない同社の強みとなっている。

市場環境としては、最大需要先である自動車産業の電動化が同社にとってリスクであると同時に、事業構造を転換する機会となる。既存のICE関連部品需要は中長期的な縮小が想定される一方、EV化に伴って銅・アルミなど非鉄材料の加工需要や充電インフラ需要の拡大が期待される。また、焼入鋼帯・ベーナイト・ゼンマイなどは自動車以外にも産業機械や精密部品など幅広い用途への展開余地があり、海外市場を含めた新規需要開拓が成長の鍵となる。国内製造業を取り巻く人件費・原材料費などのコスト上昇には引き続き注意が必要だが、価格転嫁や生産効率改善によって採算を確保できる体制の構築が進められている。

株主還元では、連結配当性向30%を目安とした安定配当を継続する方針である。また、政策保有株式の縮減を進め、その売却資金については株主還元への活用も検討する。過去5年間のPBRが0.3~0.6倍で推移し、ROEが推計8~9%程度の株主資本コストを下回っていることを低評価の主因と分析。中計では2030年3月期にROE8%を目標としており、営業利益率改善と資本効率向上の両面からエクイティ・スプレッドを改善し、PBR1倍以上を意識した企業価値向上に取り組む。

総じて、モリテックスチールは「商社×メーカー」という既存の事業基盤を生かしながら、収益構造そのものを変える局面に入っている。2027年3月期第1四半期は減収ながら営業利益が前年同期比約5.7倍となり、特に鈑金加工品と海外事業の収益改善が鮮明となった。足元のPBRは0.3倍台にとどまっており、市場からは中計達成を十分に織り込まれていないとも捉えられる。収益改革と資本効率改善が進みPBR1倍への評価是正につながれば、株価には大きなアップサイドが生じる可能性があり、今後の中計進捗に注目しておきたい。

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