*16:17JST ナレルグループ Research Memo:3Qから事前想定通りに増益へ、中計達成に向けて戦略投資
ナレルグループ<9163>は9月11日、2026年10月期第3四半期(3Q)決算を発表している。中期経営計画の達成に向けた戦略投資の実施で減益という事前アナウンス通りの方向性だが、利益は計画を上回る着地となった。なお、同社は技術者派遣企業グループ。2008年設立の(株)ワールドコーポレーションを中核とし、未経験の若手人材を採用・育成して建設現場へ派遣する建設ソリューション事業と、ITエンジニア派遣を行うITソリューション事業を展開している。建設業界の「人材不足」と「生産性向上」という課題に対し、施工管理技術者の派遣に加え、現場のデジタル化を支援する建設DXや、全国で3団体のみが許可を持つ職人(技能労働者)の有料職業紹介など、独自性のあるビジネスをてがける。新中期経営計画「Change and Growth 2030」の下、プロ人材の育成・派遣とテクノロジーを融合させた高付加価値化を推進している。
減益は事前アナウンス通り、下期以降に収益性が改善する見通しも想定通り
1. 2026年10月期3Q決算の概要
9月11日に発表された第3四半期(3Q)決算は、売上収益で前年同期比7.3%増の19,229百万円、営業利益で同2.6%減の2,203百万円となった。採用投資および営業体制強化に伴う戦略投資を実施しており、事前アナウンス通りの方向性となるが、営業利益は計画を上回る推移であるという。将来の単価上昇やDX展開を見据えた戦略投資であり、構造的収益力の低下ではなく、中長期の売上成長基盤を構築する局面となる。セグメント別ではコア事業である建設ソリューション事業が売上高で前年同期比8.1%増の17,350百万円、セグメント利益で同4.4%減の1,737百万円、在籍人数で同120名増の3,719名、稼働率で前四半期比変わらずの91.9%(ただし5月を底に改善しつつあり7月は93.0%まで上昇)、退職率で同0.7pt増の34.0%。契約単価はスキル向上と高付加価値領域への展開により、1Q520千円→2Q525千円→3Q528千円と四半期ベースで一貫して上昇傾向にある。ITソリューション事業が売上高で前年同期比0.2%減の1,879百万円、セグメント利益で同37.0%増の153百万円、在籍人数で同38名減の389名、稼働率で前四半期比0.7pt減の91.6%、退職率で同2.4pt増の25.6%。建設DXおよびBPO領域での案件獲得も進みつつあり、従来の人材派遣を中心とした収益構造から、高付加価値領域を組み合わせた事業構造への転換を進めている。一方、コア事業では、稼働率の改善や定着率向上が継続的な成長に向けた重要なポイントとなる。
2. 2026年10月期の業績見通し
2026年10月期の連結業績は、売上収益が前期比21.1%増の29,250百万円、営業利益が同6.5%増の3,010百万円と増収増益の計画である。中期経営計画の初年度として、営業・採用部門の人員増強といった成長投資を先行させるため、上期は利益の伸びが抑制されたものの、稼働率改善や単価向上に伴い売上成長が下期以降に顕在化してきている。計画達成に向けては、稼働率の改善を推進、営業体制の強化、営業エリアの広域化や建設DXの強化を図り、期末にかけてさらなる改善を図る。なお、3Qまでの利益は計画を上回って推移しているものの、現時点で予想は据え置きとなっている。4Qの事業進捗や成長投資の実施状況等を踏まえ、通期見通しを精査するとしている。
今来期の投資局面を経て、2030年10月期の営業利益は50億円へ
3. 中長期の成長戦略と株主還元
新中期経営計画「Change and Growth 2030」(2026年10月期~2030年10月期)では、「人材とテクノロジーの両輪で建設業界の未来を支える」ことを基本方針としている。また、建設業界の課題である人材不足と生産性向上に対し、コア事業の強化に加え、建設DXや職人紹介事業の拡大を推進する計画である。最終年度である2030年10月期に売上収益50,000百万円、営業利益5,000百万円、ROE20%以上、技術者数8,000人という定量目標を掲げている。計画前半を成長基盤の構築期として投資を優先し、後半で収益性向上・成長加速に取り組む。本計画はオーガニック成長のみで構成されているが、M&Aも積極的に検討するほか、中期経営計画期間中は減配しないとするなど株主還元の姿勢を示している。配当利回りは約4.8%超となっている。また、建設業界中心のDXコンサルティングをてがけるArent<5254>と実装型建設DXモデルの戦略的拡張で業務提携したことに加えて、ドローンなどで撮影した画像から自動で3D鳥瞰図や地形データを生成し、クラウド上で簡単に測量・計算ができるシステム「くみき」をてがけるSkymatiX社とも業務提携・現場実装を経て提携関係を強化している。建設DXプラットフォーム事業を展開するBRANU社との業務提携による建設現場における人手不足の解消および生産性向上などに加え、中期経営計画の実現に向けた生産性向上・業務基盤強化を目的に「コーポレートDX推進部」を新設して業務プロセス改革とデジタル活用を全社横断で推進するなど、生産性の向上に向けた取り組みも積極化している。
4. 株価
中計達成のための施策は緒に就いたばかりであり、今後は稼働率の向上(1Q91.3%→2Q91.9%→3Q91.9%→2026年10月期計画93.8%)、退職率(1Q32.8%→2Q33.3%→3Q34.0%→2026年10月期計画27.9%)、現在のところ初期導入フェーズであるDX・BPO関連売上(2030年10月期の売上高に占める割合20%)などの進捗を確認することになる。達成が視野に入ると、中計最終年度のPER15倍、時価総額450億円程度は見えてくることになろう(現在210億円)。業界トップクラスの収益性、成長力も評価されよう。
Key Points
・建設業界に特化したDX支援を多面的に展開
・2026年10月期は先行投資が利益面を圧迫するものの、好調な事業環境を背景に増益を確保
・2030年10月期に売上収益500億円、営業利益50億円を目指す
・中計達成が視野に入った場合の時価総額は450億円超が試算される
(執筆:アナリスト 山本泰三)
<KA>