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69%が望むが現実は13%…「最期は自宅で」の思いを阻む壁

山口:皆さん、先生の思いを共有されているわけですか?

山中:医師も相談員、看護師もすべて常勤で「謙虚であること」を徹底しています。在宅でそのかたの幸せを作る上で大事なのは、医療技術や行動だけではなく、ご家族やご本人の思いを尊重すること。医師はいちばん底辺でいなければならないんです。私たちは、バイトや非常勤ではなく医師も職員も常勤で雇用し、患者さんへの思いを共有して働いています。

山口:開業している先生って、ある種、客商売なので、まだきちんとしているかたが多いのですが、大学病院の先生はこちらの顔も見ない、変人みたいな人も結構いますよね。

山中:結構というか、ほとんどですね(苦笑)。

山口:母が亡くなる少し前、足が腫れていて、元日なのにお電話したことがありましたよね。すぐに往診してくださって、「慌てふためいて救急車を呼んだりしたらダメですよ。穏やかに寄り添って見守ってあげてください。すぐに伺いますから」とおっしゃってくださいました。

山中:あのときのお母さまは、穏やかな最期に向かってゆっくりと歩いている状態でした。私は別に救急搬送がすべて悪いとは思っていないんです。例えば脳梗塞の疑いがあったとき、山口さんも救急搬送するかとても悩まれましたよね。でも、ご高齢の患者さんになると、小さな脳梗塞が起こる場合はよくあります。

 病院に運ばれたからといって何ができるのか。若い時期の脳梗塞でなんとか「治したい」ときと、加齢に伴う変化の中で意識状態が悪くなり看取りが近い状態でどうするかでは、意味合いが違うはずですが、病院の医師は「治そう」とします。

 しかし、それによって、かえって患者さんを苦しめることがありますし、逆にご家族はそれで満足感を持つかたもいます。つまり家族の「ある選択肢」が正しい、正しくないという話ではないと思っています。

 私たち医師の役割は、こうやるべきだと押し付けるのではなく、ご家族に可能性をいろいろ提示しながら一緒になって考えること。なるべく一緒に考えられるような雰囲気を作ろうと思っています。

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