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『無理ゲー社会』著者が警鐘 親の「頑張ればできる」が子どもを苦しめる現実

親が一方的に「頑張れ」と子どもを叱咤するのは、むしろ残酷なことかもしれない(イメージ)

親が一方的に「頑張れ」と子どもを叱咤するのは、むしろ残酷なことかもしれない(イメージ)

 4月に入り、新学期がスタートした。新学年の始まりと同時に、来たるべき来年度の小学校・中学校受験に向けて準備を本格化させる家庭も多いのではないか。しかし、親や教師が子どもに向かって「勉強しろ」と叱咤激励することには、「ほとんど意味がない」との指摘がある。

 コロナで大きく変わった「暮らしの風景」に焦点を当て、「時代を生き抜く知恵」を網羅し紹介する『ウィズコロナ時代に後悔しない 暮らしの新常識109』(小学館)のなかで、『無理ゲー社会』の著者、橘玲氏は次のように分析する。(*注/「無理ゲー」とは攻略困難なゲームの意)

「幼児教育について言えば親の努力がある程度、結果につながることがわかっています。頑張れば点数が伸びたり、有名小学校のお受験に成功できたりするでしょう。

 しかし、その努力が報われるのも、せいぜい小学校低学年までです。さまざまな性質の遺伝と環境の影響を調べる『行動遺伝学』では、知能の遺伝率は幼少期では相対的に低く、年齢が上がるほど遺伝的な影響が上がっていくことがわかっています。足の速い子どもが陸上やサッカーをするように、遺伝的な特性に合った環境をつくっていくからだとされています」

 子どもが小さいうちは親の努力が報われることもあるが、やがて努力では学力は向上し なくなる。親ならつい口にしてしまう「頑張ればできる」という言葉も、ただ子どもを苦しめることにつながりかねない。

 行動遺伝学では、子どもへの影響を【1】遺伝率、【2】共有環境(子育て)、【3】非共有環境(学校や地元の友だち集団など)で分析する。そのもっとも大規模な分析結果を紹介しよう。総計1455万8903人の双生児を対象とした1958年から2012年までの2748件の研究をメタ分析したものだ。

 ほとんどの項目で【1】遺伝と【3】非共有環境の影響が圧倒的に大きい。【2】共有環境の影響はほとんどないか、きわめて小さい。「計算」や「認知」「言語」「学歴」などでわずかに影響は見られるが、「やる気」や「集中力」は子育てとはまったく関係ない。努力できるかどうかのおよそ半分は遺伝で決まってしまうようだ。

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