中国経済はデフレに陥っているのではないか──。日本を含め多くの国において、中国は最大の輸出国となっている。中国経済の変調はそのまま各国の景気動向を左右しかねないだけに、このデフレ懸念は気になるところだ。
6月9日に発表された5月の消費者物価指数は前年同月比では0.2%上昇とかろうじてプラスを保ったものの、前月比では0.2%下落、2月以降4か月連続の下落となった。昨年のピークは9月の2.8%上昇(前年同月比)。その後11月には1.6%上昇まで鈍化し、ゼロコロナ政策廃止による効果により一旦は回復に転じたものの、それも今年1月(2.1%上昇)にピークを打っている。
川下に比べ、川上の物価下落の方が顕著である。5月の生産者物価指数は前年同月比4.6%下落で、こちらは昨年10月以降、下落が続いている。対前月比では0.9%下落(4月は0.5%下落)と物価下落は加速している。
生産者物価に関する細目指標をみると、生産者が購入する資材価格の下落が激しく、生活資材よりも生産資材の下落が激しい。こうしたモーメントだけから予想すれば、回復にはしばらく時間がかかりそうである。
今年の中国経済はゼロコロナ政策廃止による“経済の再スタート”で急回復すると言われていた。物価指標が示す供給過剰、需要不足は、そうした予想を大きく裏切る結果となっている。
供給面をみると、政策支援の出ている業界では生産量が急増している。たとえば、新エネルギー自動車は4月までの累計で32.8%増、単月では85.4%増、太陽電池は順に56.7%増、69.1%増と急増している。しかし、足元の状況をみると、各社値下げ競争を始めており、政府の思惑、それを反映したメーカーの強気見通しに消費者が付いてきていないといった現状が浮き彫りとなっている。
粗鋼、非鉄金属、セメントなどの生産量は4月までの累計で一桁の伸びにとどまっているが、4月単月でみると、伸び率を鈍化させている。固定資産投資需要の弱さは顕著である。
産業ごとに生産計画の強弱はあり一概には言えないが、それでも全体を俯瞰してみれば生産者がゼロコロナ政策廃止の効果を意識しすぎており、計画が強すぎるのではなかろうか。