介護や看護などのケアが必要な家族、近親者などを無償でケアする人を「ケアラー」と呼ぶ。時に重い負担がのしかかることのあるケアラーの支援が、行政などで課題として認識されるようになってきたなか、新たな取り組みが注目を集めている。
「介護についての勉強会やセミナーが多く開かれる一方で、自分自身のことを打ち明けられる場所がまだまだ少ないと多くの方からお聞きします」
そう語るのは浄土宗「香念寺」(東京都葛飾区)の住職・下村達郎氏(41)だ。
香念寺では奇数月の第3火曜日に「介護者の心のやすらぎカフェ」を開催している。午後2時を過ぎると、寺には家族に要介護者のいる人たちを中心に、参加者が三々五々集まってくる。
「檀家さんもいらっしゃるのですが、ほとんどが檀家以外の方々です。家族の誰かを介護した経験のある方や現在介護をしている方のほか、将来の介護の備えとして参加する方もいます」(下村氏)
集う人たちは、この会にどのような思いで参加しているのだろうか。
「私は介護に正解はないと思いますが、世の中には自分がしてきた介護に対して後悔や負い目を持つ方が少なくありません。会では、その経験や思いを語り合い、思いを共有することに努めています。アドバイスを求める方もいらっしゃるし、ただ話をするだけで満足される方もいらっしゃいます」(下村氏)
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