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映画『PERFECT DAYS』効果で世界からも注目 「トイレ掃除」と日本人の精神性

映画『PERFECT DAYS』はカンヌのほか、米アカデミー賞にもノミネート(左からアオイヤマダ、中野有紗、役所広司、ヴィム・ヴェンダース監督。写真/共同通信社)

映画『PERFECT DAYS』はカンヌのほか、米アカデミー賞にもノミネート(左からアオイヤマダ、中野有紗、役所広司、ヴィム・ヴェンダース監督。写真/共同通信社)

見えないところの汚れまで完璧に確認する

 古い畳にフィルムカメラ、銭湯とともに“美しき日本”の情景としてとりわけ丹念に描かれているのが、トイレ掃除の様子だ。日本トイレ協会運営委員の山戸伸孝さんはその細やかさを絶賛する。

「劇中で役所さんが実践するトイレ掃除はまさに“パーフェクト”。便器と同じ目線に立って、見えないところの汚れまで完璧に確認する。私たちは海外でもトイレ掃除のやり方をレクチャーしているのですが、日本以外ではそうした作業はほとんどやらないようで、毎回とても驚かれます。

 世界的に見ても日本のトイレの清潔さはトップクラスなうえ、それが当たり前という感覚があります。15年ほど前に、休憩時間にトイレの個室で食事をする『便所飯』が社会問題になりましたが、裏を返せばそれだけ清潔な環境だとも言えますよね。一日に何度も、それも不特定多数の人が汚しにいく場所が、努力によって清潔に保たれているのは素晴らしいことだと思います」

 実際、街や駅、スーパーなど公共の場にまで、清潔さが行き届く点において世界から評価される日本だが、とりわけトイレの清潔さは一目置かれている。それは、日本人が“トイレ掃除好き”であることの証左でもあるだろう。

 過去を振り返ってみても2010年には『トイレの神様』が大ヒットし、大手カー用品チェーン「イエローハット」の創業者・鍵山秀三郎氏が「素手でトイレ掃除をすれば業績が伸びる」という経営哲学を提唱し、話題になったこともある。教育の一環としてトイレ掃除を取り入れている学校も少なくなく、日本人にとって清掃作業を超えた神聖な行為だと言っても過言ではない。なぜ私たちはトイレ掃除に“神”を見ようとするのか。

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