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【深入りしない交友関係の心地よさと危うさ】「“マスター”“ナベさん”で通う20年来のバー」「10年交際して本名も住所も知らなかった」

 謎めいた話だが、本名も家も知らず、携帯電話やメールもアウトなら、連絡の取りようはない。Nさんは今さらながらAちゃんについて、こう推測する。

「恐らく私とは不倫だったのでしょう。確かに彼女は働いていないのに、お金に困る様子はありませんでしたし、年末年始に会うのはNG。突然連絡が途絶えたのは私との関係がバレたから。そう考えればすべて辻褄は合います。

 今から思えば、交際相手の素性がわからないと、事件や事故に巻き込まれた時に面倒なことにはなりますよね。仮に彼女から何かを盗まれ、姿を消されても追いかけられないし、危うかったなとは思います。

 ただまあ、素性を深く詮索したら関係は早々に終わっていたでしょうし、事情が分からなかったので、ヨソの家庭を壊したという罪悪感もない。楽しい時間が過ごせたので、自分のなかではよい思い出です」

 深入りしないからこそ長続きする人間関係は、ひとつの処世術といえるのかもしれない。(了)

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