田代尚機のチャイナ・リサーチ

【中国不動産不況解消へ】政府主導でスタートした資金供給政策への期待と拭い去れない構造的問題

中国恒大集団の問題も不動産市況に影を落とした(Getty Images)

中国恒大集団の問題も不動産市況に影を落とした(Getty Images)

担当者による公正な融資が実行されるのか

 日米欧などのエコノミストは、巨額の財政支援とか、思い切った金融緩和など、マクロ面からのアプローチを予想しているようだが、こうしたやり方は、一部の資金が政策サイドの意図する意外の部分に流れてしまうといった短所がある。その点で今回のような中国独自のやり方は、ピンポイントで必要な部分に資金を流すことができる。さらに、投機物件、過度に贅沢な物件、質の悪い物件などを選択的に排除でき、社会が必要とする案件だけを生かすことができるといった点で優れていると言えよう。

 ただ、問題がないわけではない。ホワイトリストに登録されるには、いくつかの条件を満たさなければならない。たとえば、資金さえあればすぐに工事が再開(開始)できること、土地の担保が十分であること、消費者からすでに受け取っている資金が流用されず、確保されていることなど厳しい条件が課せられている。しかし、必ずしもそれらの条件すべてを満たさなくてもよいようで、地方政府サイドに裁量の余地があるようだ。人事権をフルに活用するだけでなく、すべての担当者が贈収賄に係わることなく、公正な融資が実行されるよう、厳しく監督管理するシステムが必要だ。

 さらに言えば、この政策は供給サイドへの政策だ。現在も行われてはいるが、需要サイドへの政策についても、さらに強化する必要があるだろう。

 中国の不動産市場には深刻な構造的な問題がある。マクロでみれば、一人当たりの居住面積は十分な水準に達しつつあるが、不動産の所有構造が極めて歪な点である。極端な例ではあるが一個人で数百件の物件を所有する者がいくらでもいるなど、投機が比較的やりやすかった2000年代~2010年代中頃に、機転の利いた一部の者(資金調達は何とかなるので、出発点で必ずしも富裕層である必要はない)が“不動産転がし”などを繰り返した末に多数の物件を抱え込み、莫大な含み益を獲得しているといった不公正、不公平、不平等な現実がある。

 圧倒的に所有率の低い若者層が、両親に頼ることなく不動産を持てるような“まっとうな市場”に造り替えなければならないが、その道筋はなかなか見えてこない。

 とはいえ、当局が積極的に動き出した以上、長期的にはともかく、短期的には不動産不況は解消に向かうのではないか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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