田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国で盛り上がる旅行需要 ハルビン市は「幼稚園児たちへの歓待とミカンの恩返し」で旅行客急増、海外旅行ではシンガポール、マレーシアが伸びる

ハルビン市に集まる観光客たち。日没時に凍った角氷は「ダイヤモンドの海」と呼ばれる(Getty Images)

ハルビン市に集まる観光客たち。日没時に凍った角氷は「ダイヤモンドの海」と呼ばれる(Getty Images)

 中国では、2月10日の春節から大型連休が始まる。中国経済は不動産不況から抜けきれないでいるが、消費の一角、とりわけ旅行需要は好調のようだ。国内旅行は、ゼロコロナ政策が廃止されたことで2023年の春節以降急速に回復している。昨年の全国国内旅行人数(推計値)は54億700万人・回、旅行収入(推計値)は5兆2000億元(107兆1200万円、1元=20.6円で計算)で、新型コロナ禍直前の2019年と比べそれぞれ90%、91%の水準まで回復(「2023~2024年中国旅行発展分析と予想」より)しており、その勢いは今年に入ってからも、衰える気配はない。

 ハルビン市(黒竜江省)では、今年の正月三が日(1月22~24日)に受け入れた旅行客は304万7900人、実現旅行収入は59億1400万元(1218億円)に達しており、いずれも過去最高を記録した。寒さに慣れていない南方からの若い旅行客に対して、一時的に寒さを防ぐためのガラス張りの避難所を道路わきに設置したり、氷の彫刻を鑑賞するためのプラットフォームを設け、温かい生姜湯や飴などを無料で提供したりするなど、市政府の観光事業活性化策がうまくいったようだ。

 年末年始にかけてこうした政府の取り組みがSNS上で拡散し始め、1月中旬には地元の人々に手厚く見守られながらハルビンの街を観光する子供たちの様子がショート動画で紹介され、それが爆発的に拡散した。

 藍色のズボンに、オレンジ色に統一された帽子、上着を付けた11人の幼稚園児たちを、地元の警察や通行人たちが迷子にならないように、人さらいにあわないように安全を確保している様子がほほえましい。広大な国土を持つ中国ではそこに住む現地の人々の気質に大きな違いがある。東北の人々は「多少、粗暴なところがあるが、一方で人懐っこく、親切である」といった評判はよく聞く。今回SNSでバズったのは、そうした東北人の良さが全面的に出た感じであろう。

 この歓待を知った幼稚園児グループが住む広西チワン自治区南寧市政府は、ハルビン市に対してお礼として、子供たちの様子に因んだ現地特産のミカン(砂糖橘)200トンを送っている。その話がネットで紹介されると、ハルビン市に対する好感度はさらに高まり、各地の子供グループが押し寄せているという。

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