田代尚機のチャイナ・リサーチ

「親日的だ!」と猛批判を受ける中国飲料メーカー「農夫山泉」の受難 騒動の発端はライバル企業創業者への追悼文か

中国ミネラルウォーター最大手「農夫山泉」はなぜ批判を浴びているのか(CFoto/時事通信フォト)

中国ミネラルウォーター最大手「農夫山泉」はなぜ批判を浴びているのか(CFoto/時事通信フォト)

「親日が過ぎる!」──中国の「農夫山泉」はミネラルウォーター販売で本土最大手の飲料メーカーで、東方樹葉を中心に各種ブランドでお茶の販売も行っている。現在、それら商品のいくつかのパッケージに“問題”があるとして、ネットユーザーから厳しく批判されており、一部の販売店では商品を排除せざるを得なくなったところも出ている。

 問題とされる部分を具体的に示すと、緑茶のパッケージには、五重塔を背景に「西暦1267年、日本の僧侶・南浦紹明が径山寺(浙江省杭州市の古刹)において仏教の修行を行い、お茶を嗜む習慣を身に着け、蒸した緑茶を東方に持ち帰り人々に伝えた。日本の抹茶はこれが起源となっている」と中国語で記されているが、この五重塔が京都東寺のそれのように見える、というもの。また、説明の内容についても「抹茶は9世紀末に遣唐使によって日本に伝えられ、その後日本人によって受け継がれ、珍重され、現在に至ったのではないのか」と指摘されている。

 そのほか、青柑プーアル茶のラベルには浮世絵風の鶴、紅茶には徳川時代の鞍を付けた馬の姿、玄米茶には鯉のぼりの柄が使われている。別ブランドの西柚ジャスミン茶ではパッケージに描かれたレモンが靖国神社の菊花紋章に酷似しているとか、ミネラルウォーター(農夫山泉ブランド)ではペットボトルの側面の凹凸が文久永宝(幕末の日本で流通した銭貨)の裏側の模様に似ているとか、さらに農夫山泉の安定株主としてオリックス系投資会社が入っているとか、相当細かい部分までもが批判の対象となっている。

 こうした書き込みだけをみると、ネットユーザーの対日感情の悪さは非常に深刻であるかのようにも思える。しかし、東方樹葉の発売は2011年であり、これらは新たに発生した問題ではない。ほかの点についても、今に始まったことではない。事件の真相はもっと別のところにありそうだ。

発端はライバル企業創業者への追悼文か

 ネットユーザーたちの記述をもう少し詳しく調べてみると、競合先である娃哈哈の創業者である宗慶后氏が2月25日に亡くなっており、農夫山泉の創業者である鐘センセン会長が追悼文を発表しているが、その内容がネットユーザーから批判されており、そこが発端となったようだ。

 この追悼文は普通に読めば故人の人となり、業績を讃える文章のようにも感じるが、本土マスコミ(3月16日付、経済観察報など)の分析によれば、「起業はとても大変で日夜常に新しい何かを探し求めなければならないが、それは起業家本来の姿である」、「“浙江四千(浙江省商人の創業の精神を表す言葉:あらゆる努力を惜しまない精神)”の模範」、「産業報国、澤被社会(事業の邁進は国家や社会に利益をもたらす)」といった感情の乗った文章が、一部のネットユーザーからは「配慮に欠ける」とか、「いくらか上滑りしている」とかいった批判に繋がったようだ。過去の両者の関係について、かつては追う立場であった鐘センセン会長だが、宗慶后氏から恩を受けながら、後にそれを仇で返すようなことをしたと批判する意見も見られた。

 亡くなった娃哈哈の宗慶后氏に対しては、ネットユーザーたちは愛国者として褒め称え、その業績を評価する声ばかりが聞こえてくる。しかし、2014年、「爽歪歪、娃哈哈ADカルシウム入り乳飲料などにはボツリヌス菌が含まれる」、「この2つの商品を飲むと白血病、骨軟骨症(小児がかかる骨の成長障害)にかかる」などといった事実とは異なる噂がネット上に広がり、その結果、売上が3割程度減少した。それが今回、宗慶后氏が亡くなった直後の2月28日~29日にかけては、ライブ販売を行ったわけでもないのに、TikTok上の娃哈哈旗艦店の店舗売上高は500%超増加しており、数ある製品の中でも、かつて「ボツリヌス菌が入っている」と指摘されたADカルシウム入り乳飲料が第1位となったそうだ。

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