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台湾企業・TSMCが半導体ファウンドリーで「一強」になった経緯 世界中の企業が受注する理由と各国が警戒する依存リスク

TSMC依存が生む経済安全保障上のリスク

 だが、各国のTSMCへの依存が高まるほど、危うい側面もある。津村氏が言う。

「中国政府は軍事力を用いてでも台湾を統一するという構えを見せており、米国のバイデン大統領は『中国が台湾に侵攻したらアメリカは軍事的に対応する』という考えを示しています。

 仮に中国が台湾を軍事統一してTSMCの最先端工場を手にし、対米輸出に制限をかけたらどうなるか。マイクロソフトやアップル、エヌビディアなど米国のテクノロジー企業が最先端の半導体を入手できなくなり、世界的な経済混乱に陥るリスクがあります。いまは軍事兵器にも半導体が組み込まれているので、安全保障の面でも懸念が生じる。半導体産業は極めて繊細なサプライチェーンの上に成り立っているのです」

 日本もこうした懸念を前提に、国産の半導体製造に力を入れる。トヨタやデンソー、ソニーなど8社の出資で2022年に設立された株式会社ラピダスに対して、国の支援総額はすでに1兆円規模になっている。2027年に稼働予定の同社工場では、2ナノメートルの半導体製造に挑むという。津村氏が続ける。

「国策でラピダスを立ち上げたのは、経済安全保障上の問題が大きい。仮にTSMCの製造が滞った場合、自前の最先端製造工場がなければ半導体の調達に著しい支障が出ます。そうした有事を想定しつつ、一方で中国との関係悪化も避けたい。米中が半導体をめぐって緊張状態になるなか、日中関係をどう維持していくか。日本が半導体戦争に生き残るには、自前製造を目指すだけでなく、政治における外交力もまた重要な要素になってくるでしょう」

 TSMC一強時代に各国が様々な思惑を抱いているようだ。

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