退任した内田誠・前社長(時事通信フォト)
エスピノーサ氏はイベントを開いた目的をこう語り、冒頭の挨拶では「これまで培ってきた日産の財産を活用し、日産を前進させたい」と意気込みも明かした。
メキシコ出身のエスピノーサ氏は、大学卒業後に別の会社を経て24歳でメキシコ日産に入社。以来、20年以上同社に勤務してきた生え抜きに近いキャリアであり、社内のことも熟知している。
商品企画、商品戦略といった部署での経験が長い。日産元役員が語る。「潜在能力がある人材だと目されてきた。2018年、39歳の若さで常務執行役員に抜擢された」
社内からは「メキシコ人らしい明るさがあり、楽器のドラムを叩くのが好きで、『日産に育てられた』との思いが強いのではないか」といった評判が漏れ聞こえてくる。
日産の2025年3月期決算の業績見通しは、800億円の当期赤字に落ち込む。まだリストラ策が確定していないため、赤字が拡大する可能性もある。
ドル箱だった北米地区も営業赤字に、再生の切り札となるはずだったホンダとの経営統合交渉も破談となった。この若き外国人社長は、苦境に立たされた日産を再生軌道に乗せることができるか。
* * *
関連記事《【インサイドリポート全文公開】日産エスピノーサ新社長を操る“影の支配者”の正体 経営陣の多くが退任するなか、中枢に留まった面々とは》では、新社長のもと経営再建に臨む日産新経営陣の内幕と今後の舵取りについて詳細にレポートしている。
【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。ジャーナリスト大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立、フリージャーナリストに。主な著書に『日産VS.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある。
※週刊ポスト2025年4月18・25日号