落ち着いた住宅地として知られる小田急多摩線・はるひ野
神奈川県の鉄道路線を見ると、主要幹線ほど沿線の知名度や発展度が高く、住宅地としての評価も安定している。一方で、支線エリアは「本線より地味」「利便性で劣る」と思われがちだった。しかし近年、再評価が進んでいる支線エリアは多く、特に生活利便性と価格のバランスが取れた駅が、幅広い層から支持を集めているようだ。
背景には、東京都心の住宅価格高騰と、神奈川県内で進む“利便性と価格の折り合い探し”がある。共働き世帯を中心に、通勤ルートを大きく変えず、かつ無理なく買えるエリアを求める動きが鮮明になり、支線の住宅地にも需要が波及しているようだ。
人口ピークアウト時代において、将来人口を維持できれば、それがその地域において不動産価値の下支えとなる。反対に人口が減少するエリアは将来の需要が伸び悩むことになる。
不動産コンサルタント会社リーウェイズは、国土交通省のシンクタンクである国土技術政策総合研究所が公表した『将来人口・世帯予測ツール』を基礎データに、2025年と2035年の人口を比較。約5億件の物件データを扱うAI分析を用いて駅ごとの将来人口の増減を算出し、“10年後に発展する駅”をランキング化した。神奈川県では、支線駅が“静かな上昇組”として浮上していた。
落ち着いた暮らしにフィット
ランキングで目立ったのが、支線である京急大師線と小田急多摩線の健闘だ。大師橋(5位、2421人増)、東門前(8位、2134人増)、川崎大師(21位、1626人増)、港町(34位、1232人増)といった大師線の各駅が上位に入った。背景には利便性と住みやすさのバランスへの評価が高まっていることがありそうだ。一方、多摩線でははるひ野(28位、1454人増)、黒川(56位、680人増)、五月台(57位、663人増)など、落ち着いた住宅地として知られるエリアがランクイン。いずれも自然環境がほどよく残り、治安面や静けさを重視するファミリー層に支持されている駅だ。
