グローバル需要の吸収先としての米国の魅力は相対的に低下
製造業回帰はどんなに頑張っても遅々としか進まない一方で、突然の追加関税付加は短期間で経済に大きな影響を及ぼしかねない。
経済はいろいろな要素から成り立っていて、それぞれの要素が複雑に絡み合ってお互いに影響しあいながら、何とか均衡を保っている。追加関税といった外的ショックで物価が上昇してしまえば、それが複雑な経路で各要素に伝達する過程で景気は変調してしまう。
とてもデリケートな経済の仕組みを理解しないで、国家が介入すれば、簡単に経済を操作できるという考え方は、一昔前の質の悪い社会主義国のようだ。
そういうことではなく、他国が高関税で自国産業を保護しているから不公平だ、表面的な関税率は低くても、非関税障壁が存在していていくら交渉してもそれが取り払われない、だから、最終手段として米国も他国と同じだけ関税をかけるのだとトランプ政権は主張したいのかもしれない。高関税をかければ相手国は屈服し市場を開放させられるとか、米国内への投資を拡大させられると思っているのかもしれない。
しかし、2023年における米国の輸入額は世界全体の13.1%を占め世界最大ではあるが、中国との差は2.5ポイントしかない(UNCTADデータより)。たとえば、米国の輸入シェアが14.2%あり、第2位ドイツとの差は6.8ポイント、第3位中国との差は7.5ポイントあったリーマンショック直前の2007年と比べると、他国との差は縮まっており、米国のグローバルな需要の吸収先としての相対的な魅力は低下している。米国との取引急減のリスクがあっても、報復に打って出る国家が現れかねない状況だ。