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田代尚機のチャイナ・リサーチ

トランプ大統領の相互関税政策は“危ないチキンゲーム” 他国が譲歩しなければ米国も崖から転落するリスク

高まる米中貿易戦争開戦のリスク

 中国は4日、米国が中国に課した追加関税率に等しい34%の報復関税率を米国に課すと発表した。実施は10日12時01分であり、交渉の余地を残す形とはなっている。これに対してトランプ大統領は7日、中国の報復措置を受けて、8日までに撤回しなければ更に50%の追加関税を9日(中国時間10日12時01分)に課すなどとSNSを通じて主張している。これに対して中国外交部報道官は8日、「米国がひたすら自分の意見を押し通そうとするならば、かならず最後まで付き合うだろう」と発言しており、米中貿易戦争開戦のリスクが大きく高まっている。

 もっとも、実害を受けるだろう米国の多くの有権者はこの政策に必ず反対するはずだ。トランプ政権を支えるコアの支持層の内、農業関係者は得意先である中国への輸出減少によって、低所得層は生活必需品の価格上昇、全体景気の悪化による所得減少、失業によって、大きな経済的ダメージを受けかねない。民衆の熱狂的支持を得て現在の地位を掴んだトランプ大統領にとって、民衆の離反は致命的だ。つまり、貿易戦争の長期化はトランプ政権にとって圧倒的に不利である。

 これはいわばトランプ大統領の仕掛けた“危ないチキンゲーム”だが投資家としては、とにかくプレイヤーがどちらも崖から転落してゲームセットとならないことを祈るばかりだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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