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中学受験の“不都合な真実”

「退学処分があるから私立の小・中学校はいじめや暴力が少ない」は本当か 私立と公立の「暴力」「いじめ」最新データを検証【中学受験の“不都合な真実”】

 前述したとおり、私立の小・中学校には「退学」処分がある。学校教育法施行規則の第26条では、公立の小・中学校、特別支援学校などの児童・生徒に対しては、退学の懲戒処分ができないが、私立の小・中学校の場合、「性行不良で改善の見込がないと認められる者」「学力劣等で成業の見込がないと認められる者」などについては、「退学処分」ができると定められている(*「性行不良」とは、人としての性質や日頃の行いがよくないこと)。

 実際に、私立校では「暴力」や「いじめ」は少ないのか。東京都が公開している統計資料から、2023年度(令和5年度)に都内の公立小・中・高校と私立小・中・高校で起きた「暴力」「いじめ」のデータを抽出して、比較した(冒頭に掲げた表参照)。

 まず「暴力」(生徒間、対教師、対地域住民や他校生徒、器物破損)だが、2023度の1年間に発生した学校数を発生率(都内の学校数に占める割合)で比較すると、中学校は私立のほうが低かった(公立中は621校中282校、私立中は187校中55校)。1校当たりの発生件数も公立より私立のほうが少なかった(公立中は1校当たりの発生件数は2.16件、私立中は同1.04件)。ただ、「私立では暴力はない」というわけではなく、小学校では発生率で、高校では発生件数で「私立のほうが高い/多い」という逆転が起きている。小・中・高全体でも、私立が著しく低いというわけではない。

私立小・中のいじめ認知件数(2023年度)は公立校の「5分の1」

 一方の「いじめ」はどうか。いじめが認知された学校数(発生率)、1校当たりの発生件数ともに、ほぼすべての項目で、公立より私立のほうが大幅に下回っている(高校の1校当たりの認知件数のみ逆転)。小・中学校の1校当たりの認知件数は、私立は公立のおおよそ5分の1だ(公立小49.4件に対し私立小は8.1件。公立中11.0件に対し私立中は2.4件)。

 また、同年度に私立校でいじめをした児童・生徒が退学・転学になったケースで、学校側が「懲戒処分としての退学」を行なったのは、小学校で0件、中学校で2件、高校で1件。自主退学を奨めるなど「その他」の対応をしたのが、小学校1件、中学校3件、高校9件だった(東京都「令和5年度における都内私立学校の児童生徒の問題行動・不登校等の実態」より)。

 これらの数字から判断すれば、私立はいじめが非常に少ないと言える。児童・生徒がいじめをしたことを理由に退学になるケースは極めて稀だが、制度が脅しとして効いている可能性はあると解釈できるかもしれない。

 しかし、同年度の「暴力」の発生に公立と私立であまり差がなかったことから考えると、私立の「いじめ」の発生があまりに少ないことには、逆に違和感を覚える。数字をそのまま鵜呑みにしていいのかという疑問が生じる人もいるかもしれない。

 関連記事《スマホとSNS中心で展開される「学校内いじめ」 私立と公立の認知件数の違いを生む「人事権を持つ教育委員会の調査」の有無》では、学校での「いじめ認知」の実情や、認知後に公立・私立で対応にどんな違いがあるかを検証し、《【私立中学「退学」のリアル】東京都の私立中学で「3年以内の退学者は約1300人」と推測 「学業不振」を理由に退学させられるケースも》では、東京都の私立中学の退学事情に迫る。

取材・文/清水典之(フリーライター)

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